教育福島0162号(1992年(H04)04月)-031page
・リーダーとして活躍できる児童はいるものの、率先して学級やグループをリードする行動が見られない。
・グループでの話し合いが、一部の児童の発言に偏ったり、男女に分かれてしまったりすることがある。
このことから担任は、児童の「所属と愛情」に関する欲求を満たす必要があると考えた。そこで、
1)リーダーの集団を導く活動
2)互いに自分の役割を自覚し、協力し励まし合うことのできる活動
3)集団への所属感を高め、互いを認め合う気持ちを深めることのできる活動
として、グループによる「長縄跳び」を実施することが有効であると考え、本テーマを選定した。
〔実践内容〕
児童の発達段階や実態を踏まえ〈ねらい〉〈内容・方法〉を明確にして実践した。〈指導援助のポイント〉は次のように設定した。
1)児童に対する賞賛や認めなどの言葉を機会と場をとらえて与える。
2)できるだけ続けて跳ぶことができるようにみんなで話し合わせ工夫させる。
3)欲求の充足状況が下位群に属する児童には、面接相談を通して具体的に指導援助を行う。
(指導援助の過程は省略)
「力を合わせて長縄飛びの記録に挑戦」
〔変容とまとめ〕
指導援助後、各要点に関する意識調査を行った。この結果を事前調査の結果と比較し、上・中・下位群別に見ると、下位群には図2)のような意識の変容が見られた。このことから、「長縄跳び」での指導援助は、下位群の児童の「所属と愛情」の欲求を満たすうえで、有効であることが分かる。
しかし、上・中位群には有効性が認められず、上・中位群に対する指導援助の内容・方法が、今後の研究課題として残された。
一方、学級の一員としてあまり認められることのなかったA子には、図3)のような意識の変容が見られた。このことから「長縄跳び」での指導援助は、A子の「所属と愛情」「自尊」「将来への向上」の欲求を満たすうえで、有効であることが分かる。
以上の実践から、児童の「所属と愛情」の欲求を満たすためには、児童の状況を的確に把握し、実践素材に工夫を加えながら指導援助することや、児童一人ひとりに即した指導援助を、意図的、継続的に進めていくことが大切であると考えられる。
図2) 「所属と愛情」に関する各郡の変容
図3) 6要点に関するA子の変容
四、第三年次の研究(平成四年度)
第二年次の研究をもとに、様々な教育活動場面での実践を深め、上・中位群に対しても有効な指導援助の方法・内容について研究を進めます。その結果に基づいて、開発的な指導援助の在り方をまとめます。