教育福島0166号(1992年(H04)10月)-007page

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合いを持つとともに、権利や自由の存立の基盤には義務や責任の裏打ちがあることの認識を求めるものでもある。

卑近な例を電車の座席にとれば、1)空席に座る人、2)座らない人、3)老人に席を譲る人、4)老人に席を譲らない人に分類できるが、これを定義付けると、1)権利行使型、2)権利不行使型、3)義務履行型、4)義務不履行型ということになろうか。

年金問題は、個人の問題ではなく、制度としての集団の問題であるから、同じ比喩はあてはまらないにしても、現役時代の安い掛金(それと同額の負担金)を主張する義務不履行型と、老後の高い年金を主張する権利行使型とが精神的に同居しているといえなくもない。

世の中の進歩や生活利便向上は、義務履行型による社会的貢献を権利行使型が享受している場合が多い。コインの裏があればこそ表があるのである。

日本でも、古来より、「苦あれば楽あり」、「我が身をつねって人の痛さを知れ」、「若いうちの苦労は買ってでもせよ」など、コインの裏表に相当する言葉がある。

最近の学校教育においては「権利」とか「自由」が強調されることが多い。しかし、人間は放っておいても権利や自由を求めるものであり、その傾向を加速させるよりも、権利や自由の裏にある義務や責任に思いをいたさせるのが教育本来の果たすべき機能ではなかろうか。

 

【筆者紹介】

 

加戸守行・かともりゆき

昭和 九年 旧関東州大通市生まれ 

愛媛県八幡浜市出身

三十二年 東京大学法学部卒業

同年 文部省入省

三十九年 徳島県教育委員会管理課長

四十五年 文化庁著作権課長

四十九年 文部省体育局学校給食課長

五十一年 文部省初中局地方課長

五十四年 文部省体育局体育課長

五十六年 文部省大臣官房総務課長

五十八年 文化庁文化部長

同年 文化庁次長

六十一年 文部省体育局長

同年 文部省教育助成局長

六十三年 文部省大臣官房長

平成 元年 公立学校共済組合理事長

四年 日本芸術文化振興会理事長

 

 

 


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