教育福島0167号(1992年(H04)11月)-039page

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ません。

「そこにパソコンがあるからただ利用してみよう」では、かえって、学習の進行が妨げられたり、子ども達に負担増を強いたりすることになりかねません。

(2) 活用の実際

次に、当養護教育センターが本年度実施している「肢体不自由児教育におけるパソコン活用」の実際の一部を紹介します。

1) ワープロとして活用しているA君

A君は、小学部四年生です。まひが強いため、彼が随意で動かせる部位は、右足の親指しかありません。しかし、ワープロで文章を書きたいという強い願望があり、担任もまた文章を書かせたいと考えていました。市販のキーボードでは、誤操作が多く、実用的ではありませんので、専用の大型キーボードを自作することにしました。キーの大きさや配置ディスプレーの位置、操作するときの彼の姿勢などを総合的に考慮し、試行錯誤を繰り返しながら製作しました。

彼は、現在、それを使って文章を書いたり、計算したりして、パソコンの活用に取り組んでいます。

2) 音声を入力手段としたB子さん

B子さんは、小学部四年生です。彼女は、舌の動きによって、相手とのコミュニケーションを図っています。舌打ち二回で「YES」、舌を出して「NO」といった方法です。この舌打ちの音を、センサーに感知させる入力装置を作製しました。スイッチ操作が必要なときに、舌打ちを一回することで、入力できるようにしたのです。現在、ワープロとしての活用を考えています。今後、B子さんと担任の工夫によっては活用範囲も広がりそうです。

なお、これらの実践については、二月十日(水)、当養護教育センターの研究報告会で発表します。

 

5 おわりに

 

このように、パソコンは、肢体不自由児の実態に即した入力装置などの工夫により、今までは考えられなかったことが実際にできるという大きな可能性を持っています。

しかし、障害によっては、どう活用していいのか、使って何をするのかということが明確でない場合も多々あるのも現状です。当センターが、本県養護教育の拠点として、パソコン活用について一人一人の実態に即した入力装置の工夫開発を重ね、障害児の生活の質(Q・O・L)の向上に役立てるような研究を進めていきたいと考えております。

 

図1 肢体不自由児(者)のための入力装置

表1 肢体不自児(者)のための入力装置

 

表1 肢体不自児(者)のための入力装置

 

直接選択法

〇 ヘッドポインタ(図1−A)

頭に装着し、前面に伸びた棒を使ってキーボードを操作します。

〇 マウススティック(図1−B)

U字型のラバーを口にくわえるもので、ヘッドポインタと同じ様に操作します。

〇 キーガード(図1−C)

通常のキーボードでは、一つのキーを押したつもりでも、周囲のキーまでも一緒に押してしまったり、指が震えて複数のキーを続けて押してしまうことがあります。キーガードは、透明の板に指が1本入る穴がキーの数だけ空いていて、これをキーボードに装着する仕組みになっています。

順次選択法

〇 最低限一個のスイッチ操作により、多数の操作対象の中から特定のものを選択する方法で、ワープロとしてパソコンを活用する場合等に多く利用されています。

これは、ディスプレー画面上の50音文字盤の中の特定の文字を列と行の組み合わせで選択していくものです。まず、列を示すランプが一定の時間間隔で自動的に移動していき、目的の列のランプが点灯したときにスイッチを操作するとその列が選択され、次行を示すランプが順に移動していき最後の目的のランプが点灯したときにスイッチを操作します。

 

 

 


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