教育福島0167号(1992年(H04)11月)-038page

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養護教育センター通信

 

「肢体不自由児とパソコン」

 

1 はじめに

 

情報機器の開発とともに、パソコンが、障害児(者)の教育、福祉など多方面で活用されるようになってきています。教育分野では障害に応じた機器の開発、活用の方法、プログラムの作成などの研究実践が積極的に進められています。

ここでは、特に、肢体不自由児及びその教育におけるパソコン活用の現状と今後の展望の一端について述べていきます。

 

2 肢体不自由児(者)とパソコン

 

一般に、両手が使えない人は、文字や図形を書くことができないと思われがちです。もちろん、筆などを口にくわえたり、足の指ではさんだりして書くことができる人もいます。それさえできない人でも、自分の気持ちを書き表したいと願っていると思います。

英国に、宇宙の誕生などに新学説を出して有名なホーキング博士という物理学者がいます。博士は、重度の肢体不自由者で、一人では、歩いたり、話したり、指を動かしたりできません。しかし、車椅子に乗ったまま、呼気センサーを使いパソコンを操作し、文章を作り、話を代行させ、研究者として日常生活を送っています。パソコンのない時代であれば、博士の学説は、日の目をみることなく埋もれていった可能性が高いのではないかと思われます。

ホーキング博士だけでなく、これまで、自分一人では、文字を書き表すことができなかった重度の肢体不自由児(者)が、全身のどこかに自分の意志でコントロールできる部分があれば、それを用いてパソコンを操作し、文章を作成し、印刷するなどで自分の気持ちを表現することができるのです。

もちろん、手を使って字を書いたり、直接自分の口で話したりするより、時間はかかります。しかし、従来不可能と思われていたことがパソコンでできるようになったことは、コミュニケーションの拡大が図られ、生活を豊かにするなど大変意義深いことです。

 

3 パソコンの有効活用を目指して

 

(1) 障害の状態に応じた入力の工夫

肢体不自由児におけるパソコンの有効活用を考えていく場合、子どもの障害の状態に応じた入力装置を考える必要があります。

通常、パソコンは、本体、キーボード、ディスプレー(表示装置)、プリンターから成り立っています。キーボードは、本体とそれを使う人間との接点となる入力装置の代表的なものです。この他にも、ディスプレー上のアイコンという矢印のようなマークを、マウスやトラックボールといった入力装置で動かして操作するという方法もあります。

しかし、これら市販の入力装置は、肢体に障害がある子ども達にとっては、使いにくい場合が多いのです。そのため、これらにちょっとした工夫を加えたり、新たに子ども達の実態に即し、入力装置(子ども達が、随意に効率よく動かせる身体部位を使う)を用意したりすることが、パソコン活用のために必要となります。

(2) 肢体不自由児のための入力装置・方法

肢体不自由児がパソコンを活用できるように、いろいろと工夫された入力装置・方法が考えられています。その代表的なものを挙げると表1と図1のようになります。

 

4 パソコン活用の実際

 

(1) 活用の前に

パソコンを教材・教具として利用する際に大切なことは、まず、使用目的を明確にすることです。本当に、パソコンでなくては効率的にできないのか、また、パソコンのどんな機能を利用するのかなどを考えなくてはなり

 

 

 


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