教育福島0168号(1993年(H05)01月)-018page
特選入賞論文
めあてを持ち、進んで体力つくりに取り組む児童の育成
体操領域:なわを使う運動の教材化と評価の工夫の試みを通して
伊達郡川俣町立川俣南小学校教諭 福士寛樹
一 主題設定の理由(研究の趣旨)
1 研究の動機とねらい
(1) 体育科の今日的な課題から
体育科にかかる改善の基本方針には「生涯体育・スポーツと体力の向上を重視する観点から児童が自ら進んで運動に親しむ態度や能力を身につけ、心身を鍛えることができるよう児童の心身の発達的特性と運動の特性との関連を考慮して内容の改善を図る」とある。特に運動の楽しさを味わわせ、各種の運動の基礎的・基本的な能力を養うことに重点をおき、授業の改善・充実、指導法の改善が叫ばれている。
(2) 児童の体力の実態から
スポーツテストの結果を見ると、踏み台昇降運動の記録が、国、県、市の各平均を大きく下回る。また、学校生活においても根気がない、あきらめやすいなどの問題も見られる。これらのことから、児童一人一人に体力つくりへの内面的な働きかけの必要性を感じた。
(3) 指導上の諸問題から
体操領域については、各種の運動技能を身につけたり高めたりして運動の楽しさや喜びを味わわせることが強調されている。しかし、指導要領では体操の運動内容が抽象的な示され方で指導の際に内容の選択に困ったり、単一の運動のみに終始したりすることが多い。
(4) 学校教育目標具現の立場から
運動に進んで親しむ運動好きな児童を育てるために、児童の心身の発達的特性と運動の機能的特性との関連を明確にした指導に全職員で取り組んでいる。しかし、期待する児童像に近づけることができなかった。
(5)教科体育を核とした体力つくりの観点から
なわを使う運動を展開するにあたり、体操領域の特性やなわを使う運動の特性に十分に触れさせ、自己の体力の現状を知らせるともに児童一人一人に興味を持たせ、積極的に体力つくりに取り組む児童を育成したいと考えた。
二 研究仮説(研究の見通し)
1 研究仮説
体力つくりに進んで取り組もうとする意欲を失いがちな児童に、なわを使う運動を教材化した「リズムなわとび」を与え、とび方を見つけたり、とぶ組み合わせをグループで工夫させる活動を通して楽しさを味わわせ一人一人の力に応じためあてを持たせ、訓練心拍数を自己評価の観点として与え取り組ませれば、なわとびの技能も高まり、自己の体力に関心を持ち、進んで体力つくりに取り組む姿が出てくるだろう。
2 仮説の解決策の具体化
(1) 教材開発・選択の視点
教材開発・選択にあたっては、指導目標を十分に達成できるかどうか、児童の学習意欲を喚起し、持続可能かどうか、運動の生活化につながるかどうかを踏まえ、次の七つの視点を設定した。
1) 完成や完遂の喜びが誰にでも持てるもの。
2) 個々の能力に応じて技術追究の欲求に応えるもの。
3) 創造性に富み、自己を表現できるもの。
4) 美的な感動をもたらすもの。
5) 集団の中で人間的なふれあいのもてるような形式や内容を含むもの。
6) 健康や体力の維持・向上に寄与するもの。
7) 新しい児童文化形成に寄与するもの。
(2) 安静、最大、訓練心拍数
1) 安静心拍数=座位または、臥位で精神的に安定した時をねらい、十回計測する。その平均を個人の安静心拍数とする。
2) 最大心拍数=220−年齢
3) 訓練心拍数=安静心拍数+(最大心拍数-安静心拍数)×(0.6