教育福島0169号(1993年(H05)02月)-006page

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提言

 

生涯学習体系化と社会教育

 

福島大学教育学部助教授

中田スウラ

 

るため、既存の教育機会を時間的・空間的に統合させていく点におかれていた。

 

ポール・ユングランがユネスコ成人教育会議で「生涯教育」の考え方(生涯教育論)を提唱してから三十年近くがたとうとしている。彼は、現代社会からの挑戦として高齢化・情報化・国際化などの社会の急激な変化を指摘し、その中で現代人が生きぬくためには教育変革が必要であると主張した。従来の学校中心の教育観では、卒業後の生活で「消費」するに必要な知識・情報を金銭と同一視し、一定の年齢期間(学齢期)に与え「貯蓄」させようとする傾向が顕著であることを問題視し、学校を銀行に見たて従来の学校中心の教育観を銀行型教育として批判した。その上で、現代人が急激に変化しつつある現代社会から提起される様々な課題に応えていくためには、その急激な社会変貌に対応できる能力の獲得が継続的に必要であり、それを可能にする生涯教育が必須の要件とされたのである。そして、生涯教育の英訳‘Lifelong Integrated Education’からもわかるように、その骨子は、教育機会を現代人の一生涯にわたり拡大することを全面に打ち出しながらも、それを可能にするため、既存の教育機会を時間的・空間的に統合させていく点におかれていた。

生涯教育論は日本でも社会教育関係者を中心に早くから導入され、その後、生涯にわたる教育機会を利用し学習を展開する学習者の「自主性」を尊重する観点から生涯学習として提唱し直され今日を迎えている。「臨時教育審議会答申」('87年)以後、生涯学習体系化の動向は急速に展開し「生涯学習の振興のための推進体制等の整備に関する法律」('90年)、「学

 

 

 


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