教育福島0169号(1993年(H05)02月)-007page

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校週五日制」(92年)へと運動した。学校を週五日制にし家庭や地域でも子どもの人間的成長・発達を積極的に促そうとするこの試みを、教育的機能を学校に過度に集中させることを改め従来の教育観を変革していく可能性を持つものとして期待したい。

生涯学習体系化は徐々にではあるが確実に推進され、生涯教育論の基本的骨子とされた既存の教育機会の時間的・空間的「統合」も、民間文化産業などの民間活力の有機的活用として具体化されつつある。民間文化産業等との協力・連携のもとで展開される生涯学習体系化を前に改めて問われることは、やはり、営利事業としての民間文化産業とは本来異なる公教育の機能・役割であり、公教育として保障していく教育・学習の質であろう。この点に関わり、文教施設の「インテリジェント化」にその基本を置く構想も提示されている。そのような機能も必要とされようが、情報の提供・伝達が私たちの人間的成長・発達に直結するわけではない。それら伝達される情報等が真に必要とされるのかを批判的に吟味し、私たちの生活世界の中に位置づけていくことこそが私たちの人間的成長・発達を促す教育・学習活動に連動していくと言えよう。今後、公教育として展開される社会教育の基本的役割の一つは、生涯学習の主体である私たち学習者がそのような相互批判的な、対話的な教育・学習関係を豊かに創造していくために必要な援助の中に求められるように思われる。

 

学生たちと野外活動に参加する中田助教授(中央)

 

学生たちと野外活動に参加する中田助教授(中央)

 

【著者紹介】

中田スウラ・なかたすうら

一九五五年 和歌山県新宮市生まれ

一九八〇年 早稲田大学教育学部教育学科社会教育専修卒業

一九八三年 東京都港区教育委員会社会教育指導員

一九八七年 早稲田大学大学院文学研究科教育学専攻博士課程修了

早稲田大学教育学部非常勤講師

法政大学文学部非常勤講師

一九八九年 早稲田大学文学部非常勤講師

江戸川学園豊四季専門学校非常勤講師

一九九〇年 日本社会教育学会幹事

一九九一年 福島大学教育学部助教授

一九九二年 福島市社会教育委員

【著書・社会活動】

『自己教育論の系譜と構造』(共著)早稲田大学出版部一九八一年、『社会教育史と主体形成』(共著)成文堂一九八二年、『文献社会教育第一巻 社会教育・社会教育史』(共著)成文堂一九八八年、『叢書生涯学習 第二巻 社会教育実践の展開』(共著)雄松堂一九九〇年、『叢書生涯学習 第五巻 社会教育の組織と制度』(共著)雄松堂一九九一年、『福島市青年の意識調査報告書』福島市教育委員会一九九二年等、著書・論文多数。また、各種シンポジウム・セミナー・講座の助言者等、社会活動でも活躍。

 

 

 

 


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