教育福島0170号(1993年(H05)04月)-032page
教育センターから
個を生かす学年・学級
経営に関する研究
学校経営部
一、研究のねらい
本研究は、「個性重視」の今日的課題を踏まえ、児童生徒一人一人の個性を生かし、伸長する学年・学級経営の在り方を追究するものである。
二、研究の計画と経過
本研究は、平成二年度から三年計画で実施してきた。第一年次は、「個を生かす学年・学級経営の在り方」の実態調査を実施した。
その中で明らかになった、「学年・学級経営をどうすればいいのか分からない」という課題を究明するため、第二年次は、「個を生かす学年・学級経営充実策の事例収集・開発」を行い、その結果を「学年・学級経営アイディア集」としてまとめた。
しかし、多くの教師は、児童生徒のよさを見いだすのに苦労し、また、よさを伸長する方法が分からないという現状にあり、具体的な支援の方法と使いやすい「学年・学級経営アイディア集」の作成が課題として残された。
三、第三年次の研究(平成四年度)
前年度の課題を受けて、本年度は次の1〜3を研究内容とした。
1 よさを見いだす手だての工夫
教師が、児童生徒のよさを多面的に把握するときや児童生徒が自分自身や友達のよさを見いだすときの方法を、五つの観点(検査・調査、自己申告、友人申告、体験活動、その他)から工夫した。その中からいくつかを次に挙げる。
(1) よさのレーダーグラフ(検査・調査)
児童生徒のよさを把握する場合、「知的側面、情意的側面、身体的側面」の三側面から構成されたアンケート(小学生・中学生・教師用の三種類からなる)を本人、友達、教師の三者が同時に実施し、レーダーグラフ(図-3)に表す。レーダーグラフに表された三者の差異から、それぞれの見方を見直し、よさを見いだすきっかけにするものである。
(2) 聞いてねカード(自己申告)
小学生向きに工夫したもので、自分のよいところをカードに書いて教師に提出する自己申告カードである。これは、児童生徒が自分のよさをどのように意識しているかを把握できるとともに、自己を見直させる機会を作ることにもなる(図-2)。
(3) いいこと見つけたカード(友人申告)
友達の目立たないよさやよい行いを見つけた場合に、このカードに書いて教師に提出する。担任以外の教師もこのカードを使い、児童生徒のよさを見いだし、教師間相互の児童生徒理解を深めるのに用いる(図-1)。
(図-1 いいとこ見つけたカード)