教育福島0170号(1993年(H05)04月)-042page

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文部省の「中学校進路指導担当指導主事連絡協議会」報告

 

本年四月五日、国立教育会館において、全国の都道府県・指定都市教育委員会の中学校進路指導担当者を対象に、文部省の「中学校進路指導担当指導主事連絡協議会」が開催されました。その中で、文部省はいわゆる業者テスト問題後の進路指導における改善策などを盛り込んだ指導資料「中学校の進路指導の現状の問題点と改善の視点」を提示し、偏差値によらない本来の進路指導の実施を強く求めました。本号の紙面を借りてその指導資料の全容を紹介します。

 

中学校の進路指導の現状の問題点と改善の視点(全文)

 

1) 問題の所在

 

いわゆる「業者テスト問題ととして、問題となっている事柄は、直接的には次の三点であろう。

一点目は、多くの中学校の進路指導が、業者テストの点数、順位あるいは偏差値によって、生徒の学習成果を評価し、それによって生徒が受験する高等学校の選択を振り分け的に行っていること。

二点目は、私立高等学校の入学者選抜において、特定の業者の一定期間におけるテストの結果に基づく選抜が行われ、中学校が求められる業者テストの結果を提供していることであり、また、そのような入学者選抜が、いわゆる「青田買い」であるばかりでなく、公平さ、公正さを欠くものであるとして、中学校教育に好ましからざる影響を及ぼしていること。

三点目は、本来、学校の教育課程や教師の職務に位置付けられるはずもない業者テストが、授業時間や放課後に実施され、授業時間の確保など、学校の教育計画の編成と実施に影響を与えているばかりでなく、業者テストの実施に伴う報酬の授受など学校と業者とのかかわりについて疑念が生じていること。

こうした中学校の進路指導の現状とその問題に対して、文部省は先般、概略、次のような指導を行った。

・高等学校の入学者選抜は、公教育としてふさわしい適切な資料に基づいて行われるものであり、業者テストの結果を資料として用いた入学者の選抜が行われることがあってはならないこと。

・中学校における進路指導は、日ごろの学習成績や活動等による生徒の能力・適性、興味・関心等に基づき総合的に行われるものであり、業者テストによる偏差値に依存した進路指導は行わないこと。

・入学者選抜に関し、一切、中学校は業者テストの結果を高等学校に提供しない、また、高等学校にあっては、業者テストや学習塾の実施するテストの偏差値の提供を中学校に求めないこと。

・さらに、中学校は、業者テストの実施に関与することは厳に慎むべきであり、授業時間中及び教職員の勤務時間中に業者テストを実施してはならないし、また、教職員は業者テストの費用の徴収や監督、問題作成や採点に携わることがあってはならないこと。

しかしながら、中学校の進路指導が、業者テストへの依存を改め、学校の教育活動としてそのあるべき姿を取り戻すためには、解決しなければならない今一つの問題、より根本的な問題がある。

すなわち、業者テストに基づく偏差値偏重の進路指導の問題は、ただ単に学校の進路指導が業者テストに過度に依存しているというばかりでなく、進路指導のあるべき姿を考える上では、その解決が課題である。

1 指導上の問題点

中学校においては、少なからず、進路指導の目標や計画がなく、あるいは、それらがあっても、形式化、形骸化しており、日常の指導で顧みられることがなく、また、専任の進路指導主事が置かれていないなど、進路指導を推進する校内組織が確立されておらず、進路指導は、第二学年の学級担任教師が三年生に対して行う進路先の選定の指導、とりわけ進学先の選定の指導となっている。

より具体的問題点を列挙すれば、以下のとおりである。

・学校としての進路指導の目標やこれを実現するための指導計画が立てられていない。また、立案されていたとしても、それは、教育委員会に届け出るために立案されているものであったりして、日常の指導に役立てられていない。

・他の校務分掌と兼務しない専任の進路指導主事が置かれておらず、多くの学校では、第二学年の学級担任の教師がこれを兼務し、一年間で交代するため、計画的、継続的な進路指導を進めるために不可欠な進路指導主事を中心とする指導体制が確立されていない。

・卒業学年において、第二学年の担任の教師が、三年生に対して行う進路先の選定の指導、とりわけ業者テストの点数や順位あるいは偏差値で合格可能な高等学校を判定する指導となっている。

・上記の結果として、学校が行う進路指導について評価がなく、指導

 

 

 


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