教育福島0170号(1993年(H05)04月)-043page
の経過や結果から生じる諸問題について省みられることがない。また、進路指導に対する評価があったとしても、それは、少なからず、どの高等学校に、何名合格したかといった評価の在り方となっている。
2 生徒の姿にみる問題点
前述の中学校における進路指導の結果、生徒は自分の将来や高等学校における学業あるいは生活に対して目的をもたないままに、教師が勧める合格可能な高等学校を受験し、進学することとなる。そのため、生徒の中には、高等学校の学業や生活に目的を見出せず、また、不本意入学観を払拭できないままに、三(四)年間の高校生活を無為に送ったり、学業不振、学校生活不適応に陥ったりして、中途退学したり、留年したりする者も少なくない。
より具体的に問題点を列挙すれば、以下のとおりである。
・自己の興味・関心の方向や能力・適性について理解しておらず、また、職業生活、社会生活の幅広い理解に基づく将来の生き方の多様性、選択の可能性について理解していないために、就きたい職業や活躍したい分野など、中学生にふさわしい将来の夢や希望、目的をもっていない。
・将来の夢や希望がないため、また、教育内容や校風など、各高等学校の教育の特色について理解していないために、何のために、何を高等学校で学ぶのかといった、高等学校進学の意義や目的を理解しておらず、進学したい高等学校がない。
・教師が勧める合格可能な高等学校を受験し進学するが、高校生活に打ち込むことがきるものを見出せないままに学業不振や学校生活不適応に陥ったりして、中途退学や原級留置を余儀なくされたり、そこまで至らないまでも、学校外の生活に楽しみを見出すなど、高校生活を無為に過ごしたりする者が少なくない。
2) 改善の方策
業者テストに基づく偏差値偏重の進路指導の改善策は、この問題に対する上記のような認識からすれば、業者テストに替わる適切なテストがあるか、あるいは、偏差値などの資料に替わる何らかの資料があるか、といった問題ではなく、業者テストに依存しているがために、本来の在り方を見失っている中学校の進路指導を抜本的に見直し、指導の転換を図ることであろう。
以下に示す諸点は、指導の転換を図るための基本的な視点である。
【改善の基本的な視点】
※各視点の解説部分省略
(1) 学校選択の指導から生き方の指導への転換
生徒が、将来の生き方について多様な選択が可能であることを理解し、自己の進路を探索することを指導・援助すること。
(2) 進学可能な学校の選択から進学したい学校の選択への指導の転換
生徒が、自己の将来の生き方に照らして、上級学校で学ぶ意義を理解し、目的をもって、進学したい学校を選択するよう指導・援助すること。
(3) 一〇〇%の合格可能性に基づく指導から生徒の意欲や努力を重視する指導への転換
生徒が具体的な進学志望校を選択するに当たっては、日ごろの学習成績に基づいて助言し志望の実現に向けて努力する過程を指導・援助する。
(4) 教師の選択決定から生徒の選択決定への指導の転換
生徒が、進学志望校の選択を含め、将来の生き方を自己の意志で選択し、自分自身で責任を負うことができるよう指導・援助すること。
こうした指導の転換は、各学校が、その進路指導の計画、それに基づく指導の展開及び指導体制など、これまでの進路指導の在り方を見直し、その基本に立ち返ることに他ならず、それ以外に適切な方策はない。
以下は、見直しに当たってのチェック・ポイントであり、本来の進路指導を進めるための基本でもある。
1 進路指導の計画を立てること
各学校は、学習指導要領の規定を踏まえつつ、生徒の進路に対する意識や進路の問題の解決に取り組む意欲・態度などから、自校の生徒が抱える進路指導上の課題を明らかにし、その課題解決に向けて、どのように進路指導に取り組むのか、進路指導の計画を立案しなければならない。
(1) 進路指導の目標を立てること
1) 学校としての進路指導の目標を立てること
中学校学習指導要領は、総則で、「生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう、学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行うこと。」と、これからの中学校の進路指導が目指すべきところを示している。
各学校は、この学習指導要領の規定を踏まえながら、生徒の実態などから、自校の進路指導上の課題を明らかにして、その解決を図りつつ、どのような生徒を育成しようとするのか、その目指すべき方向を、学校の進路指導の目標として立てなければならない。
2) 各学年の進路指導の目標を立てること
学校としての進路指導の目標を実現するためには、生徒の入学から卒業まで、三年間にわたって、指導を積み重ねていくことが大切である。
(2)目標を実現するための指導内容を明らかにすること