教育福島0171号(1993年(H05)06月)-015page
生徒指導の充実を目指して
----高等学校----
一 はじめに
生徒指導は、学校の教育目標を達成するための重要な機能の一つであり、一人一人の生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めるように指導、援助するものである。
また、生徒指導は、生徒の中に自己指導能力を育成することをねらいとしながら、すべての生徒のそれぞれの人格のよりよき発達を目指すとともに、学校生活がすべての生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになるようにすることを目指すものである。
以下、中途退学者の状況を踏まえながら、生徒指導を一層充実させる上で重視すべき点及び研究実践の概要について述べる。
二 中途退学者の状況
平成四年度の県立高等学校の中途退学者の数は、全日制の課程において、八百二十六名で、前年度に比べて九十四名と大幅に減少している。
中途退学者数が在籍者数に占める割合(中途退学率)は一・一三パーセントとなり中途退学者数とともに、過去十二年間の中で最も低い数字となっている。〈資料1〉
なお、平成三年度の全国公立高校全日制課程の中途退学率は、一・五パーセントである。
資料1 平成4年度県立高等学校中途退学者状況
今回の中途退学者状況を理由別に見てみると、「進路変更」が最も多く五百十五名で六十二・三パーセントを占め、数・割合ともに増加している。
次に「学校生活・学業不適応」による者が百八十九名で二十二・九パーセントと、前年度を大幅に下回った。
さらに、「問題行動等」による者が四十二名で五・一パーセント、「病気・けが」による者が二十八名で三・四パーセントと続いている。
中途退学者の減少の主な要因としては各高等学校が、生徒に目的意識を持たせるための適応指導を強化し、学習指導の工夫・改善や教育課程の見直しを図るとともに、小さなつまづきが増幅されないように、生徒一人一人にきめ細かく対応した教育相談を充実させたことによるものと考えられる。
また、年度末に多い中途退学を防止するため、単位不認定の予測される生徒への早期指導の実施や長期休業等を利用した学習指導の実施、さらには、進級・卒業認定に関する内規の見直しや運用の弾力化などの取組みが行われ、効果を上げてきていることも一因である。
今後とも、中途退学防止に取り組むに当たり、多様な生徒の個性を伸長することを重視し、各高等学校において特色ある個性的な教育の展開を一層推進することが必要である。
なお、昨年度より「学校生活・学業不適応」が減少し、「進路変更」が増加したため、全国的な傾向に似てきている。就職や他の学校への入学など積極的な進路変更により中途退学するケースなど新たな進路への適切な配慮が求められており、生徒の意志を尊重しながら、その生徒の自己実現を援助する方向で手厚い指導を行うことが必要である。
三 生徒指導における指導の重点
各高等学校においては、上記のような状況を踏まえ、中途退学問題への対応を含めた生徒指導上の諸課題への取組みとして、次のような点を重視する必要がある。
(1) 教師の共通理解を深め、校内指導体制の充実を図る。
○ 日常の教育活動を通して、生徒指導についての教師の共通理解を深めるとともに、生徒の実態を的確に把握し、自校の生徒指導の課題を明確にして、学校あげて効果的な指導活動を推進する。
○ 生徒指導の組織が学校の教育活動の中で十分機能するよう、すべての教師が役割を果たすとともに相互に助け合って指導にあたる。