教育福島0171号(1993年(H05)06月)-040page
養護教育センター通信
共同研究報告
養護教育におけるコンピュータ活用
に関する研究(第2年次)
−養護教育におけるコンピュータ活用の実際(その1)−
1、はじめに
養護教育においてコンピュータ活用を考える際には、対象となる子どもの障害の種類や程度に即した周辺機器やソフトウェアの開発・工夫及び入手が重要になります。中でも、個に応じた周辺機器の開発・工夫は、障害の一部を補うエイド(補助具)としてのコンピュータ活用と結び付いてきます。特に、入力方法に困難さを示す肢体不自由児の場合がより顕著です。入力方法の問題さえ解決できれば、コンピュータは彼らにとって、コミュニケーションの手段や補助具として、有効なものと成り得る可能性をもっているのです。
そこで平成四年度は、肢体不自由教育に的を紋り、主に入力装置の開発、活用の方法及びプログラムの作成等を行って、コミュニケーション支援、生活支援、学習支援を目的としたコンピュータ活用の可能性を探りました。
2、研究の概要
〜肢体不自由教育におけるコンピュータ活用の試行と実際〜
(1) 研究の方法
周辺機器のうち主に入力装置の開発、活用の方法及びプログラムの作成等の実践研究を福島県立郡山養護学校(肢体不自由)の協力の下に、小学部三名を対象として進めました。
(2) 入力装置等の作製・改良
本研究では、先ず、特定の児童専用の入力装置(以下、反応入力装置という)の作製及び反応入力装置をコンピュータ本体、もしくは標準入力装置に接続するために必要な機器(以下、ジャンクションボックスという)の、研究開発を主に行いました。(表1)
(3) 研究の実践
事例1
左手の粗大な動きに対応できる反応入力装置の作製により、コンピュータ操作を可能とし、コミュニケーション手段としたP児
P児は、脳性まひで運動機能障害がある小学部三年生です。P児の場合、かかわり手の問いかけに対して、こたえようとする強い意欲はありますが、表現手段が限られ、要求や反応に対するかかわり手の読み取りを困難にしていました。また、P児の要求や応答の内容が複雑になるにしたがい、かかわり手がその内容を的確に把握できにくいという状況にありました。したがって、「何らかの方法」により、P児の表現手段が補償され、かかわり手の判断がより的確に行われることによって、より高次なコミュニケーション関係が期待できると考えました。ここでの「何らかの方法」がコンピュータの活用であり、P児の興味・関心に応じて意欲的に、主体的に取り組める方法と言えます。(図1)