教育福島0171号(1993年(H05)06月)-041page
事例2
舌打ちの音によりコンピュータを操作し簡易ワープロ及びコミュニケーションの手段として活用したQ児
上肢、下肢を中心に全身的に不随意運動が強いQ児は、舌を出したり、舌打ちの音を利用したりして、相手とのコミュニケーションを図っていました。舌打ち二回で「はい」舌を出して「いいえ」といった方法です。もちろん、一般の人が、直接話したり、手を使って文字を書いたりするより、時間はかかりますが、ともかく、コミュニケーション関係は成立していました。
しかし、この方法では、きめ細かな内容までは、伝えることができませんでした。Q児及び担当教師共に、もっと効率よく内容を詳しく相手に伝えることができるコミュニケーション手段を探していました。
そこで、コンピュータの活用を考え、舌打ちの音を、センサーに感知させる反応入力装置--ささやき--を作製しました。スイッチ操作が必要なときに、舌打ちをすることで操作できるようにしたのです。(作品1)
事例3
脳性まひ(四肢まひ)で運動機能障害はあるが、右足指でコンピュータを操作し、学習活動に活用したR児
R児は、まひが強く、寝たきりで生活全体に介助を必要としていますが、明るく冗談好きで、何にでも興味・関心を示す活発な子どもでもあります。
R児は、学年相応の学力があり、物事に対して意欲的に取り組んでいます。R児は、随意に動かせる右足第一指を使って、自力で絵や文章をかきたい、計算したいという強い願いをもっていました。ワープロを使って文章を書くことを試みていましたが、標準キーボードでは誤操作が多く、実用的な活用とまでは至っていませんでした。
そこでR児の実態に応じて、キーの大きさや数、配置を考慮した反応入力装置--鬼太郎--を作製し、ディスプレイの位置、操作時の姿勢等を総合的に検討しコンピュータ活用を行いました。(写真1)
3、おわりに
本研究を通して、肢体不自由教育におけるコンピュータ活用の有効性を見いだすことができ、同時に、解決すべき課題もいくつか出てきました。今後、さらに研究を進めていきたいと考えています。
いずれにしても、教師は、子どもの力を精一杯発揮させ、どうすれば子どもたちが生き生きと生活し、学習や人とのかかわりが可能になるのか、コンピュータ活用に対する目的の明確化と焦点化を常に行い、課題意識をもって教育に当たることが重要です。
当センターも、研修講座等を通して、その一役を担いたいと考えています。
作品1 Q児が独自で1時間かけて打った手紙文
センターのせんせいへ
コンピュターすきです。スイッチ
をありがとう。ひろむねくんもべん
きょうしてます。わたしは
ゲームがすきです。パソパルなおち
ゃんてがみをかきました。うれしか
ったです。
図1 プッシュ式大型反応入力装置--おすだけ--
写真1 R児のコンピュータ操作風景
表1 コンピュータの入力装置の分類(福島県養護教育センター)