教育福島0174号(1993年(H05)10月)-007page

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ドラマ脚本によって数多くの国内賞、国際賞を受け、昭和五十八年芸術選奨文部大臣賞受賞。

放送作家協会理事、文芸著作権保護同盟評議員、文芸家協会、日本ペンクラブ、フランス著作者協会各会員。

福島県文学賞選考委員。

 

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<P>モロッコのフェズ市で(働く子供たち)
<P>活き活きとしており、したたかで、しっかりと人格を表現している。先進国の子どもたちが、とうに失ってしまった顔である。</P>
<P>「サッキ、アメリカ人、二ツ買ッタヨ」。メキシコシティーの盛り場で、民芸品を売る少女の日本語に、思わず小銭を渡して、がんばれよ、と声をかけたこともある。少女はコケティッシュな笑みを残して、裸足にまとわるロングスカートを翻して行く。メキシコシティーでの女子の平均結婚年齢は十六・三才と聞いた。あの逞しさならやっていける。</P>
<P>ドイツでは、中学の卒業時に進学コースか職業コースかを選択するが、それはドクターになるかマイスター(職人の親方)になるかの選択のようなもので、マイスターの社会的地位はドクターに比肩する。先進国でもそのような伝統的な社会制度を持って、学歴社会化による人間の歪みを制御しているものもある。教育の高水準を誇る日本だが、人間のフレキシビリティーを損なう傾向が強まっている。社会的発展が、人間を狭隘なものにしていくというのは、近代化というものの本来的意図と矛盾する。発展途上国の街角で見るあの子どもたちの「個」としての存在感は、不思議なことに私を感動させる。決して幸福とは言えない彼らから、歴史とはなにか、教育とはなにかという問題を突きつけられているのだ。私はフィルムに収められた彼らの顔をときおりひっぱりだしては物思いにふける。</P>
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<P>[筆者紹介]</P>
<P>岩間芳樹・いわまよしき</P>
<P>県立福島中学(旧制)卒。早稲田大学第一文学部中退。大学在学中に作家生活に入り、現在に至る。</P>
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