教育福島0174号(1993年(H05)10月)-012page

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特集[1]

心身障害児の理解推進

・実りある交流教育を目指して

・福島県心身障害児社会参加と自立・就学啓発推進会議から

養護教育課

学習指導要領の改訂にともない、教育課程編成上の留意点に小学校や中学校においても交流教育を推進するようになりましたが、心身障害者の数も心身障害児の通学する学校・学級の数も少ない現状では、なかなか思うようには進みません。

心身障害児の理解・啓発を進める上では、通常の学校との学年の目標・内容・指導形態等教育課程や日課、そして交流する学校が離れているなどの課題があり、交流活動の運営には苦労するものがあります。

 

さて今年は、「国連・障害者の十年」が昨年末に終了し、「アジア太平洋障害者の十年」が、始まった年に当たります。わが国が共同提案国になっている経緯もあり、特にアジア太平洋地域に対して、これまでわが国が培ってきた経験、技術等を提供し、交流を図ることを目指しています。

かつては、多くの人からめんどうを見てもらい何不自由なく生活できることが最も幸せであると考え、それにそって様々な事業が行われてきました。専門知識・技能をもっている人が集められ、障害に応じた適切な処遇を受けることができるようにと、障害者を受け入れる大規模な施設が造られたりしました。

しかし、自由になる時間がとりにくい、私物を置けない、介護を受けることが主になり自分から活動しないで無為に時間を過ごしてしまう等一人ひとりの願いを生かせないために、生きがいを感じられないこともありました。

そこで、障害者も同じ人間として、生きがいのある生活を送ることが大切と、生活の質を高めようというQOLという概念が提唱されました。

障害のある人もない人も共に社会を構成する一員であるという認識が深まり、お互いの幸せを願って活動することが福祉社会の基礎づくりにつながると考えるのです。

 

教育界においては、本年度から、これまでの障害児教育に加え、おおむね通常の学級で学習することのできる言語障害や情緒障害、弱視、難聴などの軽度心身障害児が、学籍を通常の学級に置いたまま特別の指導の場で特別の指導を受けることができる通級による指導が制度化されました。養護教育課としては、心身障害児教育の理解推進の新たな課題の一つとして取り組んでおります。

こうした中で県立聾学校平分校では、十三年にわたる長い間近くのいわき市立草野小学校と交流教育をすすめてきました。単発的に終わってしまいがちな交流教育の中で、いきの長い活動を続けてきたことは特筆すべきだと考えています。

来春、郡山市中田町に開校する通学制の県中地区養護学校(仮称)は、地域に開かれた学校をモットーとしていますので、地域の自然を大切にし生かし、学校近くの小学校・中学校だけでなく、地域の人々とのつながりを大事にした学習を計画し展開することを目指しています。

 

また、心身障害児の理解推進には、学校関係者だけでは十分なものとはなりません。保護者や障害者にかかわる研究者、障害者のいる施設・保育所・児童相談所・福祉事務所等の福祉関係、障害者の雇用促進活動をしている職業安定所、教育課程に位置づけられた職場実習や障害者の働く場を保障してきた企業経営者、障害者の療育を担当する保健所、そして市町村教育委員会、小学校・中学校・盲・聾・養護学校職員など養護教育関係者が一堂に会して話し合う、全国特殊教育推進連盟と福島県養護教育学校長会が主催する「福島県心身障害児社会参加と自立・就学啓発推進会議」があります。

こうした、心身障害児の理解・啓発を積極的に推進してきた、長い歴史を持っている活動をご紹介します。

 

 

 


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