教育福島0174号(1993年(H05)10月)-013page
実りある交流教育を目指して
福島県立聾学校平分校
一 はじめに
本校は、昭和五十六・五十七年度に、文部省より「心身障害児理解推進校」として指定を受けた、いわき市立草野小学校の協力校となり、以後定期的な交流が続いている。
かつて本校に寄宿舎や光風学園が併設されていたころは、放課後や休日の校庭では、いつも地元の小中学生が遊びに来ており、それらに交じって舎生や園生が共にソフトボールなどに興じている光景が見られた。
時に遊びが高じてけんかに及ぶこともあり、どこにでも見かけられる子供たちの世界が展開されていた。しかし、寄宿制が機構改革により通学制に切り替えられた昭和五十三年度からは、このような光景は見られなくなってしまった。
健聴児との交流の必要性を意識しながらも、その手立てが講じられなかった状態の中、草野小学校と教育の場で交流を図るための研究に取り組むようになった。健聴児との活動によって、児童の積極的な社会参加への意欲と自信が育まれ、地域の人々に障害児に対する正しい理解を得られることをねらいとして交流教育がすすめられている。
二 学校・地域の概要
聾学校は県内に本校(郡山)と三分校(福島、会津、平)が置かれている。平分校は浜通りを学区とし、いわき市を中心に相双地区に及んでいる。現在、幼稚部五名、小学部七名、計十二名の幼児児童が在籍し、通学している。
小学部では、電車やバスなどを利用して自力通学を行っている。いわき市は広域市であり、市内在住といっても学校までかなりの時間をかけて通学している児童もいる。
交流を行っている草野小学校は、平分校より南に一・五キロメートルほどのところにあり、旧六号国道沿いの住宅地に位置している。児童数は六百三十八名で、草野小学校の分校である絹谷分校には、四十二名が在籍している。絹谷分校は、平分校から北西二・八キロメートルのところにあり、交流行事も一緒に草野小学校で行っている。
三 交流教育のねらい
1 意義
本校の子供たちは少人数のため、子供同士は大変仲が良く、兄弟のような関係である。しかし、反面弊害も生じている。少人数のため、勉強でも運動でも優劣順位が決まってしまい、競争心に欠けていたり、限られた人としか接していないため、視野が狭かったりなどの、子供たちを取り巻く宿命的な環境から生じる弊害がある。
豊かな人間形成や社会適応の諸能力の向上を、限られた集団生活に望むのは不十分である。健聴児との交流が加わって、相互の調和と統一のとれた豊かな人間形成がなされると考える。
障害があっても人としての存在価値に変わりなく、障害や能力の程度や差に関係なく互いに生きる努力、共同でする意義を学び、相互の協力、連帯によって望ましい社会の形成が得られることを学ばせる。
2 目標
(1) 障害に負けず積極的に健聴児との交流の機会を多くもち、諸活動を通して自己の経験を拡大させる。
(2) お互いに友達として理解・協力し合い豊かな心情を養う。
(3) 自分自身を正しく認識し、積極的に多くの人と接しながら、自己を高めていこうとする意欲と態度を養う。
四 交流教育の年間計画
交流教育は、全校交流・学年交流・学級交流の三つに分けられる。四月中旬の仲良しになる会を皮切りに、運動会や遠足などたくさんの交流を行っている。
交流教育計画表
学期 月 活動名 場所 領域 規模 備考 1 4 仲良しになる会 草野小 学級活動 全校 対面式・代表挨拶 春の交通教室 草野小 行事 学年 学級に交流して路上での実際の指導 春の遠足 各目的地 行事 学年 各学年に分かれて目的地へ向かう 5 春の大運動会 草野小 行事 全校 練習・予行にも参加、個人・団体種目、ダンスに出場 6 鑑賞教室 草野小 行事 全校 ミュージカル鑑賞 7〜9 プール学習 草野小 体育 学級 独自に練習(火・水曜日)学年ごとの水泳記録会に参加 2 10 全校絵を描く会 各目的地 行事 学級 学級に交流して絵を描き、展示にも参加 11 子供秋祭り 草野小 創意 学級 事前準備から学級に交流し、競技や応援を行う 授業交流 草野小 小中連絡協議会 学級 聾学校職員が草野小の授業参観を行う 3 2 なわとび大会 草野小 体育 学年 練習にも参加し、学年ごとの記録会に参加 全 随時 交流クラブ 草野小 特別活動 クラブ 学期2回希望するクラブに所属し活動する 見学学習 各目的地 社会理科 学年 社会科などの見学学習を行う 町めぐり 各目的地 創意 学年 社会科などの見学学習を行う