教育福島0174号(1993年(H05)10月)-031page
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狭心症は、発作の起こりかたにより、労作によって生じる労作狭心症と、安静時にみられる安静狭心症に分類されます。狭心症による突然死は、特殊な例を除きほとんどありませんが、最近一ヶ月以内に生じた労作及び安静狭心症や、発作回数が頻繁になったり、症状の持続時間が長くなったり、ニトロールやニトログリセリン舌下錠の効果がおちているような狭心症は、不安定狭心症と呼ばれ、心筋硬塞に移行する危険がたかく、突然死を招くこともあるので入院治療が必要です。
急性心筋硬塞の場合は、病院に搬送されるまでに50%以上の人が亡くなると言われています。
急性心筋硬塞で、突然死につながるのは、致命的な不整脈を伴う場合がほとんどです。重症の不整脈は、心筋硬塞発症後、数時間以内に起こることが多く、心筋硬塞発症直後の処置が重要になってきます。
万が一突然の発作に見舞われた場合には、
一、気道の確保
二、人工呼吸
三、心臓マッサージ
の順で行う心肺蘇生法を知っているかどうかがその人の生死を決めます。
突然の心臓発作で倒れた場合、 一分以内に心肺蘇生を施した場合の救命率は97%、二分以内で90%、三分以内で75%、四分以内で50%、五分以内で25%と言われています。五分以上過ぎると脳組織の損傷が戻らず、例え心臓の機能が回復しても、植物人間になってしまうことが多いと言われています。
狭心症、心筋硬塞の危険因子としては、家系的な遺伝、加齢、性別(男性の方が女性より多い)のように、自分の手ではどうにもならないものがありますが、それ以外の危険因子である高コレステロール血症、高血圧症、喫煙といった三大危険因子は言うに及ばず、糖尿病、ストレス、肥満、攻撃型のA型行動型と言ったものは、医療や自己の意思で取り除いたり、和らげることができます。
したがって心筋硬塞による突然死を予防するには、危険因子を取り除く努力をするのは勿論のことですが、心筋硬塞予備軍を早期に発見することが大切です。
ここで大事なのは、人間ドックの心電図検査を過信しないことです。と言いますのは、人間ドックでの心電図はほとんど安静時の心臓の収縮状態をごく限られた時間だけ検査するためのものだからです。
そのために労作時やストレスを受けたときの心電図変化を捕らえることができません。
また、不整脈や、心筋硬塞の前段階の狭心症があっても、検査中にはたまたま異常が出ないと言う事もあります。潜在的な心臓の異常をみつけるには、安静時の心電図だけでは不十分で、運動負荷心電図や二十四時間の連続モニターが可能なホルター心電図検査が必要となります。
東邦大学の吉井教授は、心臓疾患による急性死の前兆として以下のような症状を挙げています。
1 息切れ
2 動悸(脈がおかしい)
3 胸の圧迫感、痛み
4 眩暈
5 左背部痛
6 煙草を吸っているとき、1〜3のどれかがおこった。
7 急に寒さに晒されたとき、1〜3のどれかがおこった。
8 運動中に1〜3のどれかがおこった。
9 冷や汗と失神
10 ストレスがあると長時間(十五分〜二十九分以上)息切れ、または動悸が続く。
11 全身の脱力と俗怠感
心臓は沈黙の臓器といわれている肝臓と異なり大変おしゃべりな臓器です。それゆえに心臓が先に挙げたような危険信号を発している場合には、自分勝手に判断しないで、速やかに自分のかかりつけの医者か循環器の専門医に診てもらうことが、心臓病による突然死を防ぐのに大切なことです。
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