教育福島0174号(1993年(H05)10月)-040page

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県立学校だより

二十一世紀の水産高校をめざして

<県立小名浜水産高等学校>

福島県の南端、茨城県に接し太平洋に面したいわき市。そこに県の海の玄関口、東北第二の外国貿易貨物取扱量を誇る小名浜港があります。

港に面した小高い丘、三崎公園のシンボルであるマリンタワー最上階の展望台に上ると、遠く大剣の工場群や小名浜の町並みが見え、港に停泊する大型のタンカーや商船、行き交う小型の漁船や帆走するヨットの白い帆などが目に入ってきます。目を大平洋に移しながら東に岬をぐるっと回ると、眼下に緑の松林と青々とした海につながる白い砂浜に囲まれた小じまんりとした学校が見えてきます。屋上に送受信用のアンテナを設置した口字型の四階建て校舎、それが小名浜水産高校です。学校には、海技士をめざす漁業科・水産工学科、通信士をめざす情報通信科、食品の流通や加工を学ぶ食品流通科の四学科三百三十八名の生徒と、より高度な資格取得をめざして卒業後二年間学ぶ専攻科生二十九名の計三百六十七名の生徒が学んでいます。紺のチュウニックの学生服がキリッと締った男子生徒に混じってにこやかな女子生徒の姿も見られます。V字形のグランドを囲む提防を越えると太平洋で、教室の窓から青々とした海が眺められ、生徒たちは実に爽快な気分で学習に取り組んでいます。

さて、本校は昭和九年に創立という歴史のある学校で、本年創立六十周年を迎えます。昭和四十年代までは沿岸から沖合、沖合から遠洋へと漁業の発展と共に順風満帆、優秀な多くの人材を産業界に送り出して参りましたが、その後オイルショックや二百海里漁業専管水域が強化されるなど、水産界そして本校への風向が逆風へと変化しております。

しかし、ここに来て急速に本校の存在が見直されつつあります。

獲る漁業から育てる漁業へ。

日本の海(二百海里内)は世界第六位、日本の国土の実に十二倍もの広さがあります。この豊かな海で育まれる海の幸は、魚食民族日本人の生命を支えています。フイッシュファーム(海洋牧場)が現実のものとなった今、資源管理型の漁業が確立し安定した産業へと育つ土壌ができつつあります。さらに、国民生活が豊かになると共に、海の新しい活用が行われるようになってきました。マリンスポーツ・マリンレジャーを多くの人々が楽しむようになり、クルーザー・ヨット・モーターボート・ジェットスキー・フィッシングボートなどが海面を走り、サーフィン・ボードセーリングに興じる若者が◆れ、水中を楽しむスキューバグイビングのツアーが組まれる時代となってきました。

新しい海の価値は本校にとって教育内容の変革を求めるものであり、又、学校の活性化につながるものでもあると理解し、平成六年度の新教育課程より、マリンスポーツ・マリンレジャー。栽培漁業を取り入れるべく指導者の養成や関係機関との連携を具体的に進めています。若者や社会や時代のニーズに応える海洋観光的分野への取り組みは水産高校に新しい道を開いてくれるものと信じています。

従来の教育分野についても、人口衛星時代・コンピュータを駆使した情報通信教育、食品の流通改革や高付加価値化に関する教育、 ロボットによる漁業や熱機関の製作利用に関する教育等々へと発展しています。多様なコース、選択科目を設定し、新しい学力観に基づく、生徒自らの人生設計に対応した、個に応じた教育の実現、それが本校のめざすところです。

本年六月、校内に若手教員による学校改革推進委員会を設置し、二十一世紀に対応する新しい水産高校作りをめざし、『まず実行』をモットーに次々と新しいテーマを実現して行く本校にご期待下さい。

水産高校は面白くなります。

 

 

 

 

 

 

 


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