教育福島0174号(1993年(H05)10月)-041page

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意欲を引き出す楽しい学校づくり=体験的学習を通して

<県立須賀川養護学校>

県立須賀川養護学校は、気管支喘息や心臓・腎臓などの慢性疾患のため、長期にわたる入院治療が必要な児童生徒が学ぶ病弱養護学校です。

最近は、病気で入院する児童生徒が減る傾向にありますが、その反面、登校拒否等の通学生が増えつつあります。

現在の児童生徒在籍数は、本校が四十七名、郡山分校が三十名、医大分校が十八名、総計九十五名が学んでおります。

さて、本校では、特に情緒面に配慮しつつ、病弱児にありがちな生活経験の不足などを克服するため、体験的学習を重視し、積極的に取りくんでいます。

その取り取みの様子をいくつか紹介することにします。

(一) 農家訪間を通しての体験学習

○ねらい(小学部)

実際に農家を訪問し、農業に従事している人達からお話を聞いて農作業を体験し、そのことを通して、稲が実るまでのことを知り、且つ、労働の尊さ、大切さを感じとる。

○期日及び場所

・田植え 五月七日

第二校時〜四校時

・稲刈り 十月六日

第二校時〜四校時

○場 所

本校の卒業生の農家で、本校より約2kmのところに位置する。

○体験の内容

<田植え>

子どもたちは、胸を躍らせながら先生の指示に従ってタクシーで出かけた。農家の主人から田植え仕事の手順などを聞いた後、先生方と一緒に水の張ってある水田に入り、用意した紐を泥水面に張って田植えをした。子どもたちは、泥のぬかるみの感触に驚き、仕事の大変さを知ることができた。

<稲刈り>

「植えた稲は、みごとに育つことができたかな。」という思いをめぐらせながら稲刈りの現場に出向いた。植えた稲は黄金色になっていた。みんなは思わず「やったあ。」の歓声を挙げた。

農家の主人から稲刈りの手順・鎌の使い方の話を聞き、作業に入った。手を切らないように恐る恐る鎌を使いながら、稲を刈った。緊張しながらも楽しく刈り終えることができた。

○成 果

・二度の「農家訪問」を通して、働く人達が生産のため、いろいろ工夫していることや仕事の大変さを知ることができた。

・実体験を通して、農家の人達と楽しく交流をすすめることができた。

・実体験を作文にしたためることができ、言語活動を豊かにした。

(二) 「病棟の中庭にお花畑をつくろう」(中学部、養護・訓練及び課外活動)

○ねらい

・お花畑ができたとき、どんなに素晴らしいことかをイメージ化することができる。

・お花畑をつくり、手入れすることにより、病棟の回りの人々の反応や自分の気持ちを考えることができる。

 

○活動の様子

 

○活動の様子

動機は、ひとりの生徒が「学校で金魚を育てたい」といったことからはじまり、次に「病棟にもそうしたものあればいいね。」「花壇もきれいにしよう。」というように発展していった。最初は興味関心をもって取り組んだが、内容が困難で時間のかかるものが多かったため、途中で意欲をなくしてしまう生徒も見受けられた。そこで活動の内容に変化をもたせ、意欲づけをしながら続けた。後半は、看護婦さんや他学部の生徒達も理解を示し、時には、手伝ったり、声援を送ってくれた。額に汗したことが実り、美しい花の咲く花壇によみがえった。

○成 果

身近な自然や環境を守り、美しくすることは、とても大切なことであり、他の多くの人々の心を和ませてくれることを実感することができた。

(三) その他の活動

高等部(全日制普通科)では、独自の活動として「ミニ文化祭」に取り組み、創造を大切にした活動を体験しています。また、重心訪問部(重度重複障害)では病棟及び家庭と一体となり、独自の学習発表会を行い、小さな体験の拡大につとめています。

 

 

 


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