教育福島0175号(1993年(H05)11月)-042page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

養護教育センター通信

 

心身障害児の

 

就学相談と就学指導

 

=福島県養護教育センター=

 

一、はじめに

 

すべての子どもたちは、能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を持っています。これは、障害の有無にかかわらず一人一人の子どもが有する権利です。教育を受け、学習することで、子どもたちは能力を最大限に伸長させ、社会に参加、自立していくのです。

しかし、心身の障害の程度や状態によっては、通常の教育の方法では十分その能力を引き出せない場合があります。そのため、心身の障害の種類や程度、状態に応じた様々な教育環境が準備されています。

心身障害児の就学相談や就学指導は、子どもの障害の種類や程度、状態だけでなく、保護者の心理的な状態、受け入れる教育の場、また、地域社会の障害児に対する理解などを総合的にとらえることが大切です。

ここでは、これらの事項を含めて心身障害児の就学相談や就学指導について考えていきます。

 

二、保護者(母親)の気持ちを受けとめる

 

子どもが小学校に入学するということは、親にとってたいへん晴れがましいことです。同時にみんなと一緒にやっていけるだろうかなどの不安もあるでしょう。特に、心身に障害があると思われる子どもの親にとっては、より多くの不安をもつことでしょう。

これまで発達の遅れや障害などを感じながらも、いっかみんなと同じになるのでは、みんなと同じように地域の小学校に入れるのではないかと期待している場合もあるのです。子どもの障害や発達の遅れを事実として受け入れている親にとっても、いざ就学先が決まるという場では、かなりの決心が必要になるのです。このような親の気持ちを十分に受けとめた就学相談や就学指導がなされなければ、「こんな短時間の検査や観察で子どもの何が分かるのですか」と反発され、子どもにとってよりよい教育環境への就学を勧めることが難しくなることもあります。

就学相談や就学指導は、小学校に入学する前の一時的なものではなく、その子どもの成長に応じた様々なかかわりすべてが結びついています。その意味からも障害のある子どもに比較的早期からかかわる保健所、医療機関、保育所、幼稚園など関係機関との連携が大切になります。また、就学先が決まれば就学相談や就学指導は終わりではなく、その後の学校生活への援助も大切なことです。学校生活を通して、親は自分の子どもの変化に気づくことも多いはずです。子どもの変化に応じた教育の場を親が考えるようになった時、就学相談や就学指導のよい機会となります。

就学相談や就学指導は、発達の遅れや障害のある子どもを、通常の子どもたちと区別するために行うのではなく、それぞれの子どもが能力を発揮でき、伸びることのできる教育の場を探るため、親と共に考える機会とした

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。