教育福島0175号(1993年(H05)11月)-043page

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いものです。

 

三、心身障害児の教育の場

心身に障害があることから、通常の教育環境では十分な教育効果が期待できない子どものため、その障害の状態や発達段階、特性等に応じて次のような教育の場が用意されています。

 

−本県における心身障害児の教育の場−

免除の措置がありますが、この措置については、慎重に行うことが必要です。

※ 治療又は生命・健康の維持のため、療養に専念することを必要とし、教育を受けることが困難又は不可能な子どもには、就学義務の猶予又は免除の措置がありますが、この措置については、慎重に行うことが必要です。

 

就学相談や就学指導においては、このことを踏まえ、単に障害児だから通常の教育環境以外で教育を受けさせればよいというのではなく、一人一人の障害の状態や特性等に応じた、適切な就学の場を考えていかなければなりません。そのためにも、養護教育に関する正しい情報の収集と障害名や知能指数等の数字だけにとらわれない、子どもの実態把握が必要になります。

 

四、子どもの実態把握と教育環境

 

養護教育の対象になる子どもの障害の程度や状態については、学校教育法施行令第二十二条の二に定められ、さらに文部省初等中等教育局長通達「教育上特別な取扱いを要する児童・生徒の教育措置について」などに示されています。福島県教育委員会においても「福島県養護教育就学事務の手引き」で示していますので、ぜひ目を通しておく必要があります。

子どもの実態を知ることはたいへん難しいことです。一般には、種々の検査や行動観察などで子どもの実態を把握しますが、これだけで、子どものすべてがわかるとは限りません。例えば知能指数が六〇の子どもを考えてください。この子どもができることやできないことが数字からわかるでしょうか。またどのような指導の手立てが適切なのかわかるでしょうか。子どもの実態を把握するということは、通常の教育と養護教育に振り分けるためのものではなく、その子どもの持っている力を十分に引き出す手立てを考えるためのものだと考えたいものです。その上で、手立てが可能で適切な教育の場を考えていくことが、就学相談や就学指導では大切になります。

よく、通常の集団の中で生活すれば、社会性が伸張するとか、小集団で指導すれば能力が引き出せるという意見をききますが、単にそれぞれの集団に入れるだけではその効果はあまり期待できません。その子どもに必要な環境を把握し、どのような手立てを講ずるのか、何が指導できるのかを見通して適切な就学相談や就学指導に当たりたいものです。

 

五、おわりに

 

就学相談や就学指導において、親の理解が得られないということばを聞きます。心身に障害がある子どもも、その親も地域社会の中で生活していますし、その社会を構成している一人です。障害児の就学に関しては、単に本人や親だけの問題とするのではなく、学校や家庭を含めた地域社会全体で考える必要があります。地域社会が障害児や親の気持ちを理解することは、適正な就学に向けてたいへん重要なことです。そのための啓発活動も含めて、心身障害児の就学相談や就学指導と考えていきたいものです。地域社会の障害に対する理解が深まることによって障害児が学校を卒業したあとで、地域社会で生き生きと生活することにつながります。さらに、将来を見通した適切な就学相談や就学指導につながるのだと考えます。

 

 

 


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