教育福島0176号(1994年(H06)01月)-042page

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朝河貫一賞受賞者による

 

外国施設等訪問から

 

国際理解・国際交流論文朝河貫一賞の受賞者(中・高校生十二名)により、平成五年十二月八日5十日の三日間、外国施設等訪問が実施されました。

今回の訪問の主な目的の一つであるクリスチャンアカデミー・イン・ジャパン(東京都久留米市)への訪問は、第二日目に行われました。このクリスチャンアカデミーとは、キリスト教の宣教師が自分たちの子どものために一九五〇年に設立したアメリカンスクールで、小・中・高校生約三五〇名が学んでいます。

一行は、「ヤァー」と明るく声を掛ける男子生徒に少々はにかみ、また、ホール前で手作りクッキーの販売を始めた女子生徒の「福島の生徒の皆さんもいかがですか」の声に今度はびっくり。これは学校を訪問してまもなくの光景です。しかし、すぐに緊張も解け、アメリカンスクールの生徒と一緒に笑顔でクッキーをほおばるようになりました。一行もアメリカンスクールの生徒も、同じ世代の若者として気持ちには共通するものがあり、相互に理解や交流を進めようとする積極さが感じられました。

生徒たちは、自由な雰囲気の中で生き生きと学習に取り組んでおり、一行の全員が強い印象を受けたようでした。一行は「クリスチャンアカデミーの生徒は服装も思い思いで、授業中も前の空いた席に足を投げ出すなど姿勢もよくない、また、休み時間に小遣いを稼ぐためにクッキーを販売するなど、自分たちの学校では考えられない自由があり、羨ましい。しかし、自分が納得するまで先生とやり取りをしたり、各自が課題を持って授業に取り組んでいる姿を見たとき、つい自分の学校との比較をしてしまいました。英語で話され、内容がよく分からないけれど……」と感想を述べていました。

いよいよ楽しみにしていた授業での交流です。生徒の活動を中心に進めていた初級の日本語と高校生の数学の授業に参加しました。

日本語の授業では、助詞の使い方の学習をしていましたが、日本人よりしっかりした日本語の話し方に、参加者一同顔を見合わせました。また、曙関が大好きという女子生徒と論文で曙関を話題にした佐藤さん(県立石川高一が、女子生徒が書いた「曙」の文字の前で記念撮影をすると大きな拍手が起こりました。

数学の授業では小型のパソコンを使用した二次関数のグラフ作成を行っていましたが、この学校では計算も電卓を使用するなど、日本の学校とはだいぶ違っていました。日本の学校では、計算もグラフの作成もすべて手作業で行っているため、両者の違いやメリット・デメリットについて、アメリカンスクールの生徒と一行との間で意見の交換があったようです。

その後ホールで担当者からその他の活動についての説明があり、

・校則についての学校の考え方

・他校との交流の現状

・通学に関することなどについて、一行からは活発な質問がありました。

あっという間に予定された四時間が過ぎてしまいましたが、同世代の生徒が学ぶ様子を目の当たりにし、生徒たち一同は日本の学校との相違をはじめ、それぞれの学校の特質を知ったことで、自分たちもそれぞれの学校に戻り、学習やその他の活動において改めて頑張ろうとする気持ちを強くしたようです。宿舎に戻ってからの討論会においても、国際理解・国際交流を進める前提として、広い心を持つとともに、主体的に行動する喜び、自由と責任などについて、日本人全体がもっと真剣に考える必要があり、私たちが親になる時代には、きっとそうしますという力強い言葉も聞かれました。

県内各地から集まった十二名の中学生・高校生が、二泊三日の訪問旅行を通し、見聞を広めるとともに、友情を深めることができました。今後、県内の中学校・高等学校で、国際交流を促進する核となって活躍してくれるものと期待しています。

 

 

 

 

 

 


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