教育福島0176号(1994年(H06)01月)-049page

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博物館ノート

『旧修験徳善院議大般若経』 『旧修験徳善院議大般若経』

『旧修験徳善院議大般若経』

この大般若経六〇〇巻は、本山派の修験で大善院となのっていた安達町米沢の二階堂家に伝えられたものである。同家にはこの大般若経の他にも修験であった当時の資料が数多く伝えられている。

経巻の巻末にはその版木を彫るための寄進に応じた人達の名前が記されている。

大般若経はいうまでもなく仏教聖典を総集したものであるが、この大般若経は、黄檗版あるいは鉄眼版と呼ばれているもので、江戸時代初期の天和一年に黄檗宗の僧鉄眼道光によって完成された木版印刷の大般若経である。鉄眼はこの大般若経を完成させる資金を得るため、広く庶民の間に募財活動を行った。こうして得られた資金によって彫られた版木であるため、各経巻の巻末にはその版木を彫るための寄進に応じた人達の名前が記されている。

また、徳善院がこの大般若経を入手した際には、やはり信者の人々の寄進を受けていた。それは各経巻の巻頭に墨書きされた「家内安全 油井村長谷堂 孫兵衛」などの文字からわかるのである。この寄進に応じた人々は、一人あるいは二人で一巻分の寄進をし、それぞれの願いを込めている。その願いは家内安全の他にも養蚕地帯らしく蚕安全なども見られる。さらに記された村名からは、徳善院の信者の範囲(霞)を推測することができるのである。


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