教育福島0177号(1994年(H06)02月)-017page
随想
日々の想い
子ども空間
鶴賀イチ
たかしくん
「げんごろう大きくなったね」
ふうくん
「それじゃ宇宙まで行くの」
たかしくん
「そう、みんなをのせてね」
そのかちゃん
「あそこにタンポポが咲いてるよ。あっ、そこにも」
てるちゃん
「春のお・し・ら・せ」
先生たちがそっと摘んできた、こんな子どもたちのキラキラする言葉を束ねるのが私の仕事の一つです。
それを「あのね」という名の一枚文集にして毎月家庭に届けるようになって二十号。その中では、百七十八編の詩がおしゃべりしています。
さてずいぶん前のことですが、ある日、子どもたちが窓の桟に目を連ねて外を見て話をしていました。その話のおもしろさにつられて私も目を並べてみますと、そこにはとても不思議な世界がありました。
大人の背たけでは見えなかった空間が広がり、雨や風、花や虫たちの声さえ聞こえてきます。
みっちゃん
「せんせい、トンボがサーカスしてるよ」
ひろちゃん
「はい、じょうず、じょうず、じょうずにできました」
てえちゃん
「ほら、あの葉っぱクルクルまわってる。もうすぐ葉っぱが落ちて寒くなるよってお話もしてるよ。ほらむこうの本もお話してるでしょ」
子どもたちは、こうして「子ども空間」でいろいろなものと対話しているのです。
大人はいつごろからこんなステキな対話を忘れてしまったのでしょうか。
もう一度かがんで、子ども空間に身をゆだねてみると、なんだか「子どもの目線で」「一人一人を生かす保育とは」などと肩をいからせていた自分が、子どもたちに導かれて溶けていきます。
これから、寒い冬が来ても、まいちゃんみたいに「天上まで届く雪グルマつくろう」と心はずませ、こぼれて散らばってしまったお米にもあわてず、たっちゃんみたいに「わあっ、天の川みたい」と感動して、かずとくんのようにジャリ道から聞こえてくる小石の音楽を楽しんだりしていきたいと、そう思います。
(本郷町立本郷幼稚園主任教諭)
無計画旅行のススメ
鈴木強
最近、また悪い虫が騒ぎ始めたようである。無性に旅に出たいと思うのである。特にどこへ行きたいというのはないのだが、とにかく旅をしたいのである。きっと芭蕉もこんな思いでわらじを履いたのだろう。
学生時代は、暇さえあれば(実は暇しかなかったのだが)、国内外を問わず旅行をしていたような気がする。それも、事前に綿密な計画をたて、宿の手配や観光スポットもきちんと押さえるというような用意周到な旅行ではなく、計画も何もない、もちろんどこに泊まるかなど全く考えないでただ、ぶらり、というのが、私流のいつもの旅であった。「どうにかなるさ」という、いかにもO型的、超楽観的性格が根底にあるがゆえに