教育福島0180号(1994年(H06)07月)-006page

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提言

 

小器大成楽しからずや

福島県立高等学校長協会長

砂子田敦博

 

【著者紹介】

 

【著者紹介】

砂子田敦博・いさごだあつひろ

昭和 十一年 福島市生まれ

三十五年 東北大学教育学部卒業

 

歴史をかきかえていくような大人物は、そう簡単にできあがるものではない。初めのうちはむしろ荘洋としてつかみにくい人物に見える場合が多い。すなわち”大器晩成”と老子に言わせた言葉からもうなずける。一方”栴檀は双葉より芳し”という言葉もある。かぐわしい栴檀の木は、まだ双葉のうちから香りを放ち、非凡な人は子供の時から、凡人と違ったひらめきをみせるものであるという。どちらを信じてよいかというよりも、どちらも正しいと言った方がよいのではないか。十人十色、早く目立つ者もいれば、遅くなって光彩を放つ者もいる。とにかくどちらも大人物、大天才を語る言葉には違いない。

しかし、このような稀にみる傑物の話はさておいて、大事なことは「小器こそ大成」せしめることの方が大切なことである。このことは家庭、学校、職場等あらゆる場において、また、いかなる時代においても人間社会の課題としてかかわりあわなければならない事柄である。

年少にして鋭鋒をあらわす者もあれば、晩年にして渾然たる大人物となる者も、.共にそれぞれ立派である。だがそのどちらでもない凡人といわれる者はどうすればよいのか。決して神童でもなく、大人物でもない、いわば小器は浮かばれないのか。そんな馬鹿なことはないし、あらしめてはならないことである。世の中で最も多数を占める小器こそ大成する価値ある存在なのである。神童を羨む必要も

 

 

 


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