教育福島0180号(1994年(H06)07月)-014page

成するとともに、各校の道徳的課題を十分に踏まえ、解決の方策を吟味したものでなければならない。

〈作成上の留意点〉

(1)　児童生徒の実態や地域の実態については、よさを十分に把握し、一層伸ばすような視点を盛り込むこと

(2)　地域性、学校規模、伝統や校風に着目し、学校の独自性を尊重した道徳教育となるよう配慮すること

(3)　児童生徒同士や教師と児童生徒の豊かな人間関係を醸成してよさの尊重や認め合いが日常的に行えるよう配慮すること

(4)　教師は、児童生徒の道徳性の変容の傾向を捉え、よりょく生きようとする児童生徒の努力を評価し人間的成長を見守ること

(5)　道徳教育における家庭や地域等との連携は、以前から重視されているが、学校週五日制を考慮してそれぞれの教育力を一層充実させていくこと

　

2　内面的な力をつける指導

この指導の中核となるのが、道徳の時間の指導である。道徳の時間に学習する道徳的価値については、児童生徒はこれまでの生活経験から何らかの問題意識や課題意識をもっている。そのこととかかわりをもたせながら、自分なりの気づきや思いを豊かにして道徳的価値の自覚を深め道徳的実践力を培っていけるように授業を組織していく必要がある。

授業の構成としては、指導過程の基本型を柔軟に捉えその一部を事前や事後指導として扱うなどの工夫も数多く実践化されてきている。事前指導においてアンケートや意識調査を活用する試みなどは道徳的価値そのものへの興味・関心を高める方法として有効である。また、学校や学年の重点目標にかかわる内容の指導は、他の教育活動と関連付けたり、豊かな体験を計画したりして、総合的な指導として年に何回か取り組むことが必要となる。

〈指導上の留意点〉

(1)　補助資料などを通して中心資料への興味・関心を高め、描かれている場面に心動かし、学習する道徳的内容に対する課題意識を喚起すること

(2)　展開部分で、資料への的確で深い共感を引き出すこと

(3)　価値を内面的に自覚させる段階では、多様な価値観を引き出して価値を内面的に感得させるようにすること

(4)　資料の提示に十分な工夫を凝らすこと

(5)　終末の段階では、高められた価値観や実践意欲が持続するように配慮すること

　

3　豊かな体験による指導

道徳教育における豊かな体験とは道徳的価値を内面的に自覚したり、行為として表すことのできる体験である。

児童生徒は、学校生活の中の様々な体験の中でたくさんの道徳的問題や課題に直面する。それに豊かに反応して主体的に解決しようと考えたり判断しようとしたりする内面的な心の動きが道徳性を育むことになる。

〈指導上の留意点〉

(1)　学校教育の中で計画される豊かな体験は、様々なねらいをもっている。教師はその体験について道徳の内容の四つの視点との関係からどのような支援が可能か十分に検討しておくこと

(2)豊かな体験の中の道徳的問題や課題については、道徳の時間の補充、深化、統合の機能を生かした指導に心がけること

(3)　担任は、児童生徒が学級で年間を通してどのような体験をするのかを構造的に把握し、道徳的実践の場と機会に偏りがないように配慮すること

　

4環境による指導

「人は環境をつくり、環境が人をつくる」とも言われる。心の教育である道徳教育にとって、望ましい環境を積極的につくることは、心に好ましい刺激を与えたり、道徳教育の日常化を図ったりする上で大切な役割をもっている。そのためには、学級や学校における人間関係を充実するとともに、校舎・教室等環境の整備に努めることが必要である。

〈指導上の留意点〉

(1)　日常における教師の言葉かけなど日常生活の何気ない小さな教育活動の積み重ねが人的環境の基本であるととらえること

(2)　教師との信頼関係や学級の支持的風土作りなど豊かな人間関係を醸成すること

(3)　一般的な環境の充実・整備とともに掲示などを通して、児童生徒に実践への意欲を喚起し、自分自身との対話ができるよう工夫すること

(4)　家庭や地域社会との連携を積極的に図るとともに、実践可能な具体的な活力となるように努めること