教育福島0181号(1994年(H06)09月)-049page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教育福島0181号(1994年(H06)09月)-049page


博物館ノート

 

『養蚕関係資料』

 

ように信達の養蚕技術は、わが国の養蚕の発展に大きく貢献してきたといえる。

 

福島県は、全国有数の養蚕地帯である。特に近世の信達地方(旧信夫郡・伊達郡)は、「奥州蚕種本場」として広く知られ、養蚕技術も著しく発達した地方である。伊達郡掛田村(現霊山町)の佐藤友信が著した『養蚕茶話記』(一七六七)や梁”村(現梁川町)中村善右衛門の『養蚕秘訣』(一八四九)などの蚕書(養蚕技術書)は、わが国の蚕書のなかでもとくに著名なものである。善右衛門の発明した「蚕当計」は、わが国最初の寒暖計で、それまでの自然的飼育法から科学的飼育法への画期的な技術革新となった。このように信達の養蚕技術は、わが国の養蚕の発展に大きく貢献してきたといえる。

当館には、江戸後期から明治初期にかけての蚕書はじめ養蚕錦絵など三二点の資料が所蔵されている。その代表的なものを紹介したい。わが国の養蚕技術の集大成ともいうべき但馬国の蚕種製造家上垣守國の書『養蚕秘録』(一八三〇)は、その代表であろう。これはシーボルトによってヨーロッパに紹介された後、ホフマンによって仏訳され一八四八年にパリで刊行された技術輸出の第一号の書である。現在わが国でその所在が確認されている数冊のうちの一冊を、当館が所蔵している。その他、県内のものでは梁”村の中井閑民著『養蚕銘鑑』(一八六〇)、信州の養蚕技術を記述した『養蚕秘書』(一七六六)や成田重兵衛の『養蚕絹節』(一八一三)など、わが国の代表的な蚕書も所蔵している。

 

ホフマン訳『養蚕秘録』初版1848年…パリ刊

ホフマン訳『養蚕秘録』初版1848年…パリ刊

 

江戸後期から明治初期の蚕書

江戸後期から明治初期の蚕書

 

錦絵「蚕やしなひ草」

錦絵「蚕やしなひ草」

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。