教育福島0185号(1995年(H07)02月)-029page

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教育ひと□メモ

わかりやすい教育法令解説4)

学校事故

総務課

 

学校事故という用語は、確立した定義をもつものではないが、一般的には、学校教育活動に伴って発生した事故や学校施設の使用に伴って発生した事故を総称して用いられている。

一 学校事故の形態

学校事故が発生した場合には、損害賠償等の法的責任が問われることがあるが、学校側に責任があるとされてきたものを法律的観点から整理すると次のようになる。

(1) 教職員の職務に関連して発生した事故

教職員の職務に関連して起きた事故で損害賠償責任が問題になるのは、○その職務を行うについて(職務行為)○故意または過失により(故意・過失)○違法に(違法性)○他人に損害が生じたとき一相当因果関係)である。

(2) 学校の施設・設備の設置・管理の暇疵に

関連して発生した事故

学校の施設・設備の設置・管理の暇疵に関連して起きた事故で損害賠償責任が問題になるのは、学校の施設・設備の○設置・管理に暇疵があったために(暇疵)○他人に損害が生じたとき(相当因果関係)であり、施設・設備そのものの不備での事故と、施設・設備には不備はないが管理に手落ちがあって事故を招いた場合とがある。「暇疵」とは、欠陥とか手落ちという意味である。

二 教職員の問われる責任

学校事故により、児童生徒が死傷した場合教職員は、法律上次の三つの責任を問われる可能性がある。

(1) 民事上の責任

民事上の責任は損害賠償のかたちをとる。公立学校の教職員の職務に関連して起きた事故については国家賠償法が適用されるので、被害者からの損害賠償請求に対しては、学校の設置者である地方公共団体が応じることになる。この場合、教職員に故意または重大な過失があったときは、地方公共団体は当該教職員に先に支払った賠償額の返済を求めることが認められている。(求償権)

(2) 刑事上の責任

刑事上の責任は、犯罪を犯した者に刑罰を科するというかたちをとる。刑罰は原則として故意犯を罰するので、学校事故について刑事上の責任が問題になるのは比較的まれである。児童生徒に体罰を加えた場合に、けがの有無によって傷害罪や暴行罪の適用が問題になったり、授業中の事故について業務上過失致死傷罪の適用が考えられる。

(3) 行政上の責任

行政上の責任は職務義務違反ないし職務解怠を理由とする懲戒処分のかたちをとる。公務員に対する懲戒処分には、戒告、減給、停職、免職の四種類(地公法二九1))がある。

これらの責任の追及はそれぞれ別の観点からおこなわれるので、一つの学校事故について三種類の責任が問われることもある。

三 教職員の注意義務

損害賠償責任を負うかどうかは、教職員の過失の有無、すなわち通常尽くすべき注意義務を怠ったか否かにより決まる。注意義務について法令上特に規定はないが、判例から次のように整理することができる。

(1) 注意義務の範囲

教職員には児童生徒の保護監督の義務があるが、それは、親権者の監督責任のように、全生活関係にわたるものではなく、学校における教育活動、及びこれと密接不離の関係にある生活に限られる。

例えば、小学校五年の児童が放課後、図工のポスター作成中、他の児童のとばした画鋲付き紙飛行機が目に当たり負傷した事故について担任教員の注意義務の範囲外とした判例(昭五七・九・二〇福岡高裁判決昭五八・六・七最高裁判決同旨)がある。

(2) 注意義務の内容、程度

児童生徒の発達段階に応じて、その判断能力(危険回避能力)が低いほど教員の注意義務の内容、程度が高度なものとなる。

小学校低学年の児童の場合、その判断能力、行動能力が不十分であることから、判例においては、教員に対してかなり高度な注意義務を要求する傾向にある。一方で、高等学校の生徒については、ほぼ成人に近い弁識能力を備えていることから、生徒の一切の行動を常に監督する義務は教員にはないとした判例(昭五八・二・一八最高裁判決)がある。

また当該教育活動が危険性の高いものであるほど教員の注意義務の内容、程度は高度なものとなる。

 

 

 


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