教育福島0188号(1995年(H07)07月)-029page
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |
な。」「練習した分、タイムが縮まるんだも。」「おれだって、練習すっと選手になれっぺ。」「一本のタスキって、カッコいいベした。」と、それぞれに駅伝の魅力を感じている。
「ふくしま駅伝に出て、テレビに映るんだ。」「区間賞取んだ。」「只見駅伝に出っと、Tシャツもらえんだべ。」「先生だってその年して走ってんだから、おれだってできっぺ。」と、それぞれの思いを話しかけてくる。
記録会や選考会では、「おれに勝ったらAチームだ。ふくしま駅伝の選手だ。」「まだまだ負けてられっか。」と、大見栄を張って先行するものの……。なにせ、生徒は伸び盛り、私は……。生徒たちは、本当にまじめに、一生懸命練習をする。家に帰ってから自主トレをする子もおり、陰の努力の大切さも知っている。そんな駅伝好きの人間の生徒たちとともに、私は、今日も走る。
今年の郡大会は、本校が会場で、新しいユニホームも購入。「男女アベック優勝だ。」と、全員がはりきっている。また、ふくしま駅伝でも、「総合五十位以内、村の部入賞だ。」「区間○○位以内だ。」「絶対選手になるぞ。」と、頼もしい限りである。
私も、一昨年、あこがれのふくしま駅伝に初出場した。生徒から受け取ったタスキを、次の生徒に手渡したときの感激が、今もよみがえってくる。昨年は、ブレーキになってしまったので、「今年こそは」と、心に秘めている。
生徒の目標は、昨年、田村高校駅伝部主将を務めたM先輩に、「追いつけ、追い越せ」である。私の目標はといえば、生涯スポーツとして、生徒たちと走り続けることであり、ライバルは、その生徒たちである。
(南郷村立南郷中学校教諭)
はな
笹川憲子
![]()
「花がすき。」花屋の店先に並んでいる華やかな花も嫌いではないがどちらかというと、控えめな山野の花が好きである。でも、年に一度くらいは店先の花も飾りたいと思う私は、花を区別して言わないでいる。
そんな私が一番気になっている花は、近所の塀際に咲く「シロスミレ」とである。タチツボスミンの紫もいいけれど、希少価値からかシロスミレに愛着がある。スミレの類は簡単に交配されるそうで、シロスミレも程なく姿を消すのだろうか。在来種は外来種に侵食されるらしい。ニホンタンポポも近くではなかなか見られないが、先日は、シロバナタンポポに出会い、「どうか来年も」と祈りたくなった。
家の小さな庭に花があったし、華道を習っていたので、花は身近にあったが、何気ない山野の花がいいと思うようになったのは、教員としてのスタートを切った南会津での生活が大きい。
教員住宅の裏には、山から流れ出た清らかな小川があり、初夏のころには、水芭蕉がすぐ間近で見られた。ホウノキの枝先に咲く黄白色の大きな花も見ることができた。
写真でしか知らない花を、すぐ傍らでみることができた。
花との出会いは、たいてい突然であったが、ミヤマオダマキとの出会いもそうであった。檜枝岐での研究会の帰り道、天気がよいからと歩いて帰る道の熊笹のなかに、ひっそりと咲いていた。「見つかってしまった。」といってるようにも見えた深い赤紫色が、鮮やかに思い出される。もう一度見てみたいと思うが、なかなかかなえられない。
オキナグサは、深い林を抜けて、突然に開けた草地にあった。薄暗い林の中の光が、眩しくなったとき、やはり、突然に目に入ってきた。オキナグサもミヤマオダマキと似て、赤紫のビロードのような色だった。早々と花びらを散らせた花は、やわらかな翁の髭のような白い長毛を風に揺らせていた。オキナグサは群生していたが、やはり慎ましやかに咲いていた。
桃色のイソカガミは薄暗い林の中の岩の影で、かくれんぼをしていて鬼を待ち兼ねていたような様子を見せて咲いていた。愛らしい花である。
夏の日に見たナツスイセンや田の畦のクリンソウ、春浅い日の福寿草など、どれもこれも控えめながらしっかりと自己主張していた。
ゲンノショウコやドクダミ、ハコベの花まで、目を近付けて見ると美しいものである。「雑事の花まで美しいと思う気持ちは分からぬでもないが、家の周りまで…」という騒々しい家族の声を、私は遠くの方で聞いている。
(県教育庁義務教育課指導主事)
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |