教育福島0188号(1995年(H07)07月)-031page
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期待し依存する風潮も見られる。
一方、幼稚園では、幼稚園教育の内容や方法についての理解が不十分であったり戸惑いがあったりして、次の様な状況も見られる。
〇一定の到達度に向けて教師が選択し計画した活動をさせていく保育
〇主体的あるいは遊びという言葉でかかわりに遠慮がみられる保育
〇幼児の実態に困難を感じる教師
このことから、幼稚園教育では、その目的や基本をしっかりと捉え、幼稚園教育の在り方を正しく認識していくことが大切である。
また、幼児の生活は、家庭を基盤として地域社会に広がっていることを踏まえ、幼稚園生活が家庭や地域社会から切り離されたものでなく、家庭や地域社会の生活と連続性を保ちながら展開されるようにしていくことが必要となってくる。
3 幼稚園教育の基本
幼稚園は、一人一人の幼児がよさや可能性を発揮して、発達に必要な体験を得られるよう、幼児期にふさわしい環境でなければならない。幼稚園教育は、幼児の生活の自然な流れの中で、周囲の環境に自ら興味を持ってかかわり、様々な活動を展開する中で得る直接的な体験を積み重ねて進められなければならない。
今、学校教育は、二十一世紀を目指し社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとして進められている。学校教育の出発点としての幼稚園教育でも一人一人が自分らしさを発揮して意欲をもって取り組む主体的態度や思考力・判断力・表現力などを育てるための基礎づくりの時期であることを踏まえて、その教育の在り方を考える必要がある。
幼稚園での教育は、幼稚園生活を通して一人一人の幼児が発達に必要な経験を自ら獲得していくように援助することである。環境を構成する教師の役割の重要性を考えたい。
4 指導の充実
幼児が環境にかかわり、主体的な遊びを通して健全な自立を促し、集団生活の中で人間に対する信頼感、物事への興味・関心、運動能力の基礎となる力を養うために、発達の特性を捉え、直接体験を充実させる指導法の工夫に努めなければならない。一人一人の幼児が充実した日々を送り、遊びを通して経験を積み、心の世界を広げ、考え、挫折や葛藤を自分の力で乗り越えていけるような場と機会が得られるように、生活の流れを大事にし、変化しながら展開する保育をしなければならない。
(1) 一人一人を理解する
日々の保育記録により意識化し、活動のみに目を奪われることなく幼児の中に育っているものを見極め、育とうとしているものを見つめる努力をすることが大切である。幼児と真正面から向き合い幼児の姿を実感し、心の動きを感知する心が求められる。
(2) 一人一人のよさを認め生かす
一人一人の幼児が何に興味を持ち何がその子に育っているのか、どのような発達の流れの中で今の生活・活動に取り組んでいるのかといった心情や意欲・態度を確かめながら援助することが大切である。
発達する姿がそれぞれ違っていて、興味や関心のもち方も違っている幼児に対して、画一的な指導が行われれば、その幼児にとっての大事な経験の機会が失われ、意欲も失わせてしまうことになりかねない。幼児一人一人のその子らしさ、特性を十分理解し、その子のよさが十分に発揮できるような状況を作り出していくことが、一人一人の子どもを生かす援助につながっていく。
(3) 共感的な理解
(カウンセリングマインド)
幼児は自分が誰かに受け止められ見守られているという安定感の上に立って、自分の活動を広げ周囲に働きかけながら自己を形成していく。一人一人をかけがえのない存在として認めることから一人一人を生かすことが始まるが、温かく見守るということは、幼児を信頼し期待をもって見守ることである。教師は、一人一人の幼児をかけがえのない存在として受け止め、生活を共にしながら行動の仕方や考え方、感じ方を敏感に感じとっていく努力をすることが大切である。
幼児の主体性を大切にすることは放任することではない。教師がどのようなかかわり方をしているかも振り返って見る必要がある。
(4) 家庭・地域との連携
学校週五日制の月二回実施に伴い、家庭や地域との生活の流れを考え、連携を図ることが求められている。
保育の場を地域に広げ、自然や文化、人材を環境に取り入れ、人々の生活にふれる機会を設けることや幼稚園を親子の触れ合いや交流の場として提供したり、地域の幼児教育のセンター的役割を担ったりすることも必要になってくる。
また、小学校との連携が図れるような機会を設け、発達の連続性を踏まえた教育となるようにしなければならない。どのような場合でも、「幼児にとって、今、何が必要か。何が大事か。」を考えながらすすめたい。
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