教育福島0189号(1995年(H07)09月)-049page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

教育福島0189号(1995年(H07)09月)-049page


博物館ノート

『フタバクジラ』

昭和五十七年七月十九日、双葉町新山の町道工事現場の地層から、大型動物の骨の化石が発見されました。十日間にわたる発堀で、これはクジラの骨の化石であることがわかりました。骨を含んだ岩石をいくつかのブロックに分けて運び、五年間にわたり県の文化課そして県立博物館で入念にクリーニング(岩石より骨を取り出し、骨のまわりの泥を取り除く作業)を行いました。その結果、頭骨・耳骨・胸椎十個・肋骨十五個・肩甲骨二個・上腕骨・尺骨・擁骨など、クジラの上半身の主だった骨が確認されました。

元横浜国立大学の長谷川善和博士の鑑定により、この「フクパクジラ」は全長が十メートルに近く、頭骨の特徴からヒゲクジラ類に属することがわかりました。ただ、ヒゲクジラ類の中のケトテリウム科・ナガスクジラ科・コククジラ科`セミクジラ科のどれとも異なり、胸椎や肋骨の形態は現在生息しているコセミクジラに似ている点が多い。コセミクジラ科のクジラは化石としてはこれまで発見例がなく、フタバクジラはコセミクジラ科の新種の可能性があり、ヒゲクジラ類の進化を知る上でたいへん興味深い化石です。

フタバクジラを含んでいた地層は、今から約三百万年前に海底に堆積した地層です。すなわち、当時は現在よりも陸側に海が入り込んでいた訳です。また、クジラの化石とともにサメの歯の化石が多数見つかり、このクジラはサメに襲われたか、死んだ後サメに食われたのではないかと推測されます。フタバクジラは当時の水陸分布やクジラの生態を知る上でも貴重な標本です。

フタバクジラの産出状態

フタバクジラの産出状態

(骨をはつぎり見せるために骨以外の部分に白粉をまいている)

フタバクジラ上腕骨長さ42p

フタバクジラ上腕骨長さ42p


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。