教育福島0190号(1995年(H07)10月)-006page
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提言
自尊感情を育てる教育を
福島大学教育学部助教授
大宮勇雄
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「こういうことをしてはいけない」
七、八年前のことになりますが、私どもの大学に、ブラジル・サンパウロ市の幼稚園の園長先生が留学されたことがあります。彼女は、まだ三十そこそこの日系女性で、県費留学生として日本の幼児教育の研究のためにやってきたのでした。
その園長先生が、一度だけ、日本の幼児教育の実態を見て、顔を曇らせたことがありました。それは大学の授業の中で、市内のある園の保育の様子を収めたビデオを見ていたときのことです。歌か楽器演奏の一斉指導の場面だったと思います。おそらく先生の指示どおりに取り組まず、全体の活動を乱すような行動をしたからでしょう、一人の子どもが先生の前に呼ばれて注意を受けている場面が映し出されたときです。
園長先生の表情が一変しました。そして、心痛むという表情で、「こういうことは絶対にしてはいけないことです。」と、非常に厳しい口調でいったのです。
にこやかな笑顔を絶やすことのなかった彼女が、なぜあれほどの「憤り」を見せたのか。うかつなことに、私がその真意に気づいたのは、彼女が帰国してからずっと後のことでした。彼女は、教師が叱る理由の当否やその口調の厳しさを問題にしたのではありませんでした。「みんなの前で叱る」というやり方を憤っていたのです。それは、その子が悪いことをしたというイメージを周囲の子どもたちに印象づけ、その子の中に「悪い子」という自己イメージを形成することにつながるという点で、プライドを深く傷つける最悪の方法だと彼女は考えたのでした。
〈自尊感情を育てる〉
欧米において幼児期の教育の中心的目標となっているのは、
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