教育福島0190号(1995年(H07)10月)-007page

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Iな感情としての、自我や自尊感情(self-esteem)を育て、根づかせることです。

 

子どもが自分自身に対してもつ基本的な感情としての、自我や自尊感情(self-esteem)を育て、根づかせることです。

つまり、「じぶんは何かを成し遂げる能力をもっている」「自分は周囲からよい子としての行動を期待され、信頼されている」「自分は、かけがえのない価値をもった尊い存在である」という自己感情・自己イメージこそ、その後の成長や学習を促し励ます、基本的な原動力であるという考え方です。そして、自己に対する尊重こそ、他者への思いやりや権利尊重の起源だというのです。

〈日本的集団主義への反省〉

これに対して、従来のわが国の教育においては、「みんなの前で叱った方が効果的」とか、「こうやって叱っておけば、他の子どもも今後はきちんとやるだろう」という考え方が徹底的に批判されずにきたように思われます。そしてその背後には、「自分を捨ててみんなに合わせる」「『みんなと同じ』はいいことだ」という、日本的集団主義があったように思われます。

「みんながするから自分もする」とか、「自分の意見を控えて周囲に合わせる」という日本的集団主義は、戦後日本の経済発展の精神的土台として有効に機能してきた面があることは事実です。しかし、人権の尊重や個性的、創造的人格の形成、さらには国際人の育成が大きな課題となっている今日において、日本的集団主義は大きな転換期を迎えているように思えます。「日本的集団主義」を、子どもの権利・人権という視点から再検討してみることが私の現在の研究課題となっています。

 

【著者紹介】

大宮勇雄・おおみやいさお

〔略歴〕

一九五三年 福島県福島市生まれ

一九七一年 福島県立福島高等学校卒業

一九七五年 東京大学教育学部卒業

一九八三年 東京大学大学院教育学研究科修了 東京大学教育学部助手を経て、八三年十月から福島大学教育学部勤務

〔現在〕 福島大学教育学部助教授

幼児教育専攻。現在は、欧米の幼児教育研究の紹介と、日本との比較研究に取り組んでいる。

〔著書〕

「保育・幼児教育体系」(労働旬報社)、「保育のとびら」(日本書籍)など。

 

 

 


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