教育福島0190号(1995年(H07)10月)-041page

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教育ひと口メモ

わかりやすい教育法令解説3)

国公立学校の宗教的中立性について

 

一 宗教教育の禁止

教育基本法第九条二項は、国公立学校における特定の宗教のための宗教教育、その他の宗教的活動の禁止を定めている。これは憲法の保障する信教の自由と政教分離の原則に基づいて、宗教教育の在り方と国公立学校におけるその限界を明示することにより、憲法第二十条の精神を教育上実視しようとするものである。

 

二 宗教的情操教育

ところで、教育基本法第九条一項は「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない」と規定しており、この趣旨は、宗教を信ずる、信じない、また、他宗教や無宗教を侮蔑、排斥しない、許容すること、さらに、宗教が歴史上社会生活において果たしてきた役割や宗教が現代社会生活において占める他位等についての宗教上の教育的価値は認めなければならないものであると解されている。

しかし、宗教に関する知識は歴史的に存在する具体的諸宗教を離れてはこれを授けることができない。国公立学校における宗教教育は、宗教自体を教授することを目的とする独立の課目ではなく、他の機会を通じて行われることになる。

このことを具体的に述べたものとして、昭和二十四年十月二十五日付けの文部事務次官通達「社会科その他、初等および中等教育における宗教の取り扱いについて」があるので、その中からいくつか留意点を挙げてみたい。

◇学校が主催して、礼拝や宗教的儀式、祭典に参加する目的で神社、寺院、教会その他の宗教的施設を訪問してはならない。

国宝や文化財の研究、その他文化上の目的で、学校が主催し、これらの施設を訪問する際には、児童生徒に強制しない、その宗教的施設の儀式や祭典に参加しない、教師が命令して敬礼その他の儀式を行わせない。

◇各教科の教育目標に照らし、必要な場合には、各種の宗教の教祖、慣行、制度、宗教団体の物的施設、厚生及び教育活動、種々の宗教史上の事件などに関する事実を含んでもよい。これらの教育資料において、特定の宗教的教理、慣行、制度、経験などを、価値がないものとして否認したり、特定のものを特に高く評価したりするような表現を用いてはならない。また科学と宗教は両立しないものと仮定してはならない。

社会科においては、宗教が社会生活の中でどんな役割を果たしてきたかを明らかにする点に重点がおかれなければならず、また適当な学年において、憲法の内容やその他の法律にもとづいて、信教の自由の意義を教えなければならない。

音楽、美術、建築の指導においては、教材として宗教的感化を受けた作品を利用してもよい、芸術的表現に対する宗教の影響を研究することは望ましいことである。

 

三 教育の宗教的中立性

国公立学校の児童生徒の自発的な宗教活動は自由であるが、教育の宗教的中立性の立場から、また他の児童生徒に対する影響ないし、校内の秩序の点から一定の規制を加えるのはやむを得ないと考えられる。

宗教的理由による格技拒否の事例では、「信教上の理由で格技を拒否し、レポート等の代替措置を認められず退学処分になったことは、信教の自由をある程度制約したにせよ、信教の自由自体、特に公教育の宗教的中立の要請から見ると決して許容できない措置であったとまではいえない。」との判決(平五・二・二二・神戸地裁)がある。

 

 

 


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