教育福島0191号(1995年(H07)11月)-029page
教育ひと口メモ
学習障害児への教育的対応
養護教育課
一 はじめに
学習障害(LD)について話題になっております。
文部省では、平成四年に「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議」を発足させ、審議を重ねております。その中間報告が平成七年三月に発表されましたので、この報告で示された学習障害の定義、実態把握の方法や指導についての基本的な考え方について概略を紹介します。
二 学習障害の定義
現段階では、次のようになっています。
学習障害とは、基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力の習得と使用に著しい困難を示す、様々な障害を指すものである。
学習障害は、その背景として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、その障害に起因する学習上の特異な困難は、主として学齢期に顕在化するが、学齢期を過ぎるまで明らかにならないこともある。
学習障害は、視覚障害、聴覚障害、精神薄弱、情緒障害などの状態や、家庭、学校、地域社会などの環境的な要因が直接の原因となるものではないが、そうした状態や要因とともに生じる可能性はある。また、行動の自己調整、対人関係などにおける問題が学習障害に伴う形で現れることもある。
三 実態把握の方法
児童生徒の適切な実態把握は、指導内容、方法の選択の大切な手がかりになります。したがって、指導計画の作成を念頭に置いて実態把握を進めることが大切です。
1) 知的発達の状態を把握する。
知能検査によって、全般的な発達の遅れがないかどうか確認する。
その検査によって、知能指数の算出だけでなく、検査の過程や結果の内容を分析的に評価する。
2) 教科の基礎的能力を把握する。
学習活動全般における平素の学習状況を評価、分析し、どのような問題を示しているかを把握する。
標準学力検査を実施し、学習能力をしっかりつかむ。
3) 個人内の能力のアンバランスを把握する。
各種検査の結果、進んでいるところと遅れているところとの間に有意な差があるかどうか、知能と学業成績との間に有意な差があるかどうか確認する。
4) 原因を推定する。
中枢神経系の機能障害の推定に当たっては、児童生徒の成育歴の把握、検討とともに、医学的な諸検査を実施する。
5) 重複障害の有無を把握する。
学習障害は、他の障害の状態が原因となるものではないが、重複して生じる場合もあるので、十分調査をする。
6) 行動上の問題を把握する。
注意の集中と持続の困難、多動、衝動性、情緒の不安定、社会性の不足等の有無について行動観察を行い、問題を把握する。
四 指導についての基本的な考え方
1) 個に応じた指導の一層の充実
学習障害児の示す特性や問題点は様々ですので、指導に当たっては、個別の指導計画を作成し、個に応じた指導内容・方法や教材・教具を工夫することが大切です。
2) 指導の形態と場
学習障害児に対する指導は、通常の学級における指導を基本に対応していくことになりますが、学習障害の状態は多様であることから、その状態に応じた適切な指導の形態や場について今後更に検討を重ねることが必要です。
五 おわりに
学習障害児は、学校や家庭の中で学習上のつまずきや対人関係での困難な事例に相対しながらも元気に頑張っています。一人ひとりの実態を理解した細心の指導が望まれます。