教育福島0193号(1996年(H08)02月)-006page
提言
研究と教育の間で
東北大学加齢医学研究所教授
佐竹正延
美しい異性を見ては心を躍らせ、ごちそうの匂いを嗅いでは舌なめずりをする。こうした感情は青少年期からのもので、年齢がいっても持続するものの様である。翻って筆者などは大学の研究機関に勤務して、自ら進んで研究活動に従事しているわけであるが、その感情的基盤は何であろうか?知的好奇心が研究遂行の原動力であるというのが、一応の答えであろう。しかしながら好奇心は通常、幼少時ほど旺盛で年を経るとともに減退していく。本能の裏付けを持つ食欲・色欲と異なり、知的好奇心がより複雑しかし脆弱な心情である所以である。
さてそうした知的好奇心でもって個人が勝手に、研究に意欲を燃やしている分にはよいが、筆者の所属する実験科学の分野では、複数の個人がチームを組んで行う共同研究的な要素が極めて強い。そして筆者の相手となるのは二十歳代の大学院学生であって、彼等を指導・教育していかなければ研究の実は挙げられない。就任したての駆け出し教授である筆者ではあるが、若い人達にどの様に対したらよいのかと時々考える。
まず知的好奇心であるが、少年期の素朴な「なぜ」とは少し異なり、研究の現場ではある程度の職業的訓練を経ないと、そもそもそれがどういうものかわからない。そこで手ほどきとして少々は我慢して実験の真似事をやってもらうことになる。しかし研究そのものにおいては、むやみやたらに頑張るのはよろしくないと思われる。筆者同様学生も