教育福島0193号(1996年(H08)02月)-007page

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怠情であるとしたら、最小限のインプットで最大限のアウトプットを得るに如くはない。その為には頑張ってはならず、よく論理の筋道をつけて必要なだけの実験をする方が学生も納得するのではなかろうか?

また大学院学生ともなればもう大人であり、命令などで動くものではない。しかし学会で発表するとか、論文を発表したりするとかで、自分が周囲から注目されているとなれば学生の気分が悪かろうはずがない。成果が素晴らしければ、アメリカの学会に連れて行くといえば、学生は更に喜ぶ。

学問的好奇心を生涯にわたって高度に維持していくことは、筆者の如き凡俗人には容易ならざる業に思われる。そして我々の研究活動は残念ながら、食・色・金銭欲の満足には直接つながらないのである。研究遂行という形而上的使命を怠惰・横着の精神やらいい格好しいやらといった形而下的感情でもって自分も学生も奮い立たせるのが研究・教育であると言っては、心得え違いであるとお叱りを受けそうである。

我々東北人の美質はその愚直なまでの誠実さであると言われている。しかしそれが裏目に出て、東北地方が長らく後進地方に甘んじてきた面も否定できない。誤解を恐れずに言えば、研究・教育も少々打算・欲得を加味して考えてもよいのではなかろうか?

 

【著者紹介】

佐竹正延・さたけまさのぶ

〔略歴〕

昭和二十六年 福島県信夫郡飯坂町生まれ

四十四年 福島県立福島高等学校卒業

五十年 東北大学医学部卒業

五十四年 東北大学大学院医学研究科修了

平成元年 京都大学ウイルス研究所 助教授

四年 東北大学加齢医学研究所 教授

 

米国マサチューセッツ工科大学に遊学の平成3年8月、キャンパス内にて

 

米国マサチューセッツ工科大学に遊学の平成3年8月、キャンパス内にて

 

〔現在〕

研究者の奇矯な性格は、対人関係において迷惑をふりまくことしばしばである。また筆者は、癌や個体発生における遺伝子発現の調節機構を研究テーマとしているが、日々の活動が直接に人々の福利厚生に役立つわけでもない。にも拘わらず研究活動が許されているのであるから、研究成果を挙げることにしか存在理由はないのであると、反省・自戒しつつ精進している。

 

 

 


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