教育福島0193号(1996年(H08)02月)-039page
教育・イン・ザ・ワールド
−外国の学校に制服はあるの?−
国際化にふさわしい教育の話題をシリーズで紹介する「教育・イン・ザ・ワールド」。今回は、以前、文部省英語担当教員海外研修(長期)に参加し、英国に滞在した経験を持つ鈴木宏治先生(会津高校)による「制服」に関するレポートです。
制服(uniform)は、ラテン語のunus(一つの)とforma(形)に由来しています。制服は、本来同一の服を身に付けることにより、社会的機能を効果的に行うことができるためのものであると言えます。現在、中学・高校の男子生徒が着ている学生服は、1886年に陸軍下士官の軍服をモデルとして高等師範や帝国大で採用され、徐々に広がりました。一方、女子のセーラー服は、和服から洋服への変遷を経て、初め運動服だったものが1930年頃から通学用服として普及したようです。
近年、県内の高等学校でも、これまでの制服からブレザー型に変わった学校も少なくないようです。さて、外国ではどうなのでしょうか。個性を大変重視するアメリカやカナダの学校では、生徒が同じ服を身に付け通学することは、一部のキリスト教系の私立学校を除いて、非常に珍しいことのようです。夏季であれば、Tシャツにジーンズといったカジュアルな服装が一般的です。
しかしながら、イギリスにおいては、大部分の中等学校で制服が採用されています。学校により様々ですが、スクール・カラrのブレザーにネクタイ、または、セーターやカーデガンにネクタイを制服としているところが多いようです。英国滞在中に私が訪れたロンドンから東へ列車で1時間程のコルチェスター市(Colchester)にあるロイヤル・グラマー・スクール(Royal Grammar School)は、400年の歴史を持つ公立の名門男子校ですが12才から16才までの生徒は紫のブレザー、シックースワォーム(The Sixth Form)と呼ばれる大学進学の準備課程で学ぶ17、8才の上級生は、自らが自由に選んだスー乞が制服でした。
クラスの生徒たちに「制服」の是非について尋ねたところ、賛成意見としては、私服だとお金がかかるという"親思い"の経済的な理由や毎日学校へ着ていくものを選ぶのは面倒だという“怠惰的な"理由が多く、反対意見としては、画一的な制服は自己表現の衰退につながり個性が失われるといったものが多く、賛否両論がありました。ただ、どちらの側も、現在の学生服に対しての肯定的な意見はほとんどありませんでした。
外国の人々の目には、日本の黒い学生服を着た男子生徒の集団は、軍隊を連想させ、大変異様に映るようですが、その採用の経緯を考えると当然のことかもしれません。
▲同じコルチェスター市にある公立で共学の総合中等学校ギルバート・スクールの生徒たち
(縁のストライプのネクタイトセーター)
▲ロイヤル・クラマー・スクールの生徒たち
(紫のフレサーとネクタイ)
▲ロイヤル・グラマー・スクールの上級生たち
(自分の好みのスーツとネクタイ)