教育福島0194号(1996年(H08)04月)-010page

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児童生徒の側に立った道徳の授業を展開していくには、まず、よさを認め励まし伸ばす指導を充実させていくことが大切になる。さらに、興味・関心や意欲を高め、児童・生徒自身が道徳的価値について感じたことや考えたことを、自発的に伸び伸びと発表したり表現したりする学習活動を吟味し、ねらいとする価値の内面化を図ることが望まれる。

○ 先行オーガナイザー法(県教育センターの研究成果による)など資料に描かれている道徳的問題や課題に対する児童生徒の豊かな反応を引き出す資料提示の工夫

○ 場面絵、視聴覚機器などの効果的な活用や構造的、視覚的板書など資料の場面状況を構造的に把握させ考えさせるべき価値を明確にする工夫

○ 児童生徒の道徳的価値をゆさぶり、多様な価値観を引き出す発問の精選・吟味

○ 児童生徒が価値の追求・把握を効果的に行えるよう指導形態や学習方法の工夫

・ 意図的指名、相互指名など各段階のねらいに沿った指名の工夫

・ パネルディスカッションやディベートなど児童生徒が意欲をもって取り組める話し合い活動の導入

・ 事前、授業中、事後の考えの推移がわかる学習シートや変容が意識できる道徳ノートの活用

○ 動作化、役割分担など授業の活性化につながる体験的学習活動の工夫

(3)道徳教育における評価

道徳教育の評価の考え方については、「各教科における評価と同様な評価を道徳の時間に関して行うことは適切でない。」と明記されている。

道徳性の評価は、人格の全体にかかわるものであり、不用意な評定をしてはならないのである。児童生徒の道徳性を評価する意義は、指導を通してどの程度成長したかを明らかにすることである。そのために道徳性の評価は、長期的・多面的かつ、総合的に行い指導に生かせるようにすることが大切である。

 

三 豊かな体験の場の充実

 

学校教育全体で実践される豊かな体験活動は、それぞれ独自のねらいをもっている。それらのねらいを道徳の価値内容とのかかわりで捉え直しておくことは、子供たち一人一人の道徳性を、より広く育むような指導をする上で重要になる。それは、体験活動を通して道徳的課題が浮彫りにされたり、道徳の時間で育成された道徳的実践力が自然な形で日常の道徳的実践に結びついたりしているからである。

(1) 道徳の価値内容との関連

○ 道徳の価値内容の四つの視点と体験活動の関連を見直した場合、内容項目全体にわたる調和的な体験活動の場や機会が確保されているか。

○ 教師と児童生徒との尊敬と信頼関係を基盤に、児童生徒相互の認め励まし、助け、学び合う場と機会が積極的に設けられているか。

○ 豊かな人間関係を基盤とした様々な学習活動や体験活動の中で学級や集団のために働く場や機会があるか。

○ 学校や学級の支持的風土の中で他を思いやる機会はあるか。

○ 道徳的な環境や自然環境、人間関係の中で感動する場や機会があるか。

(2) 家庭や地域社会との連携

道徳教育を充実するには、家庭や地域社会との連携を積極的に図るとともに児童生徒の日常生活のあらゆる機会や場において行われることが必要である。

○ 家庭や地域における様々な体験や行事などを学校の道徳教育と結びつけて道徳的実践の場を広げる場や機会があるか。

○ 学校、家庭、地域社会の三者の連携を確立するために、共通する道徳的課題を明確にできる場や機会を確保したり、一貫性のある体制を確立しているか。

 

四 いじめ問題に対する道徳教育とのかかわり

 

いじめ問題への対応として、道徳教育計画の中に、生命の尊重、感謝と思いやり、集団生活の向上など人間としての在り方や生き方にかかわる内容を重点的に取り上げ、指導の充実に努めることが大切である。

いじめ問題を道徳の時間で扱う場合、次の点に留意して取り扱う必要がある。

○ いじめ問題の根底にある、思いやりの心について考えるとか、友情について考えるといった道徳的価値にかかわる部分の指導に重点を当て、人間としての在り方や生き方の問題を話し合い、道徳的価値を深く自覚させるとともに、態度化に結び付けていけるような指導が重要である。

○ 人間関係にかかわる指導を行う場合には、人間関係にかかわって素晴らしい生き方をした人や感動的な友情、思いやりの心、感謝の心、謙虚な心が描かれている資料を選ぶことを基本とすべきである。

 

 

 


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