教育福島0195号(1996年(H08)06月)-029page

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判別するのに最も効果的なのが空中写真であり、ある方法で見ると地形のようすがまるで飛行機から見下ろしているように立体的に見える。さらに、この地形ができた原因を教えてくれるのが地層である。

特徴的な地形も地層もいたるところにある。しかし、知識と経験が乏しい私は、重要な手がかりを見落すことが多かった。少し経験を積んでくると、それよりもっと大事なことに気づいた。それは、目的をはっきりさせて地形や地層を見つめてみると、彼らはじつにいろいろなことを語りかけてくるのである。

先ごろ、勉強がにがてという子供たちとしばらく算数の勉強をした。六年生のK男は、九九が不確かで、かけ算やわり算ができない。授業中は分らないのでぼんやりしている。が、少人数で勉強するとこれがK男かと思うほど一生懸命に取り組む。

四年生のM子は、自分が納得しないとそこで一歩も動かなくなる。テストのときもそうであるから、一問目でとまると点数にならない。

どうしてこんな簡単なことが分らないのだろう。理解に苦しむことが続いたが、その理由を一つ一つ話しかけながら確認してみることにした。すると、その子なりの理由がちゃんとあったのである。ああそうか、だから分らなかったのだね。だからとまったのだね。子供と私の間にあった溝が少しずつうまり、それぞれの子供に応じた支援ができるようになってきた。分り、できるようになると生活にも自信が持てるようになるのであろう、子供たちに明るさが増してくる。

地形も教育も目的を持って、目を凝らして見ようとしなければ何も見えてこない。子供たちも地層も、自分を分ってくれる人をひたすら待っているのである。この頃、少しだけ見るということが分りかけてきた。

(会津教育事務務所指導主事)

 

国は違っても

山野辺藤夫

 

の便りが届きました。私の名前が付けられた桜の花が咲いたという内容でした。

 

昨年、外国から一通の便りが届きました。私の名前が付けられた桜の花が咲いたという内容でした。

これは、数年前、アメリカの一般家庭に滞在し、毎日、学校現場で研修する機会を得た際、受け入れてくれた学校からのものでした。

その時の感動が蘇りました。私にとって、見るもの聞くもの全てが新鮮で驚きの連続でした。

例えば、日本では考えられない平棟の校舎やフットボールができるグランドが二つという広大な敷地、ゆとりある環境、シャワー室や豊富な楽器類、多種の工作機械など施設設備が充実していました。また、教員のほか、カウンセラー、図書館司書など数多くの職員による徹底した分業制による学校運営にも驚きました。

また、日本とはかなり異なる学習内容を見聞することができました。三年生の技術の授業では、箱から荷物を吊り上げるクレーンやマシュマロを飛ばすカタパルトの製作を行っていました。ミニモーターを利用して、うまく吊り上げたり、遠くに飛ばすには、動力の伝達や吊り上げ腕・投げ腕が工夫しどころです。

一概に言うことはできませんが、このような一見簡単な作業学習の中に探究的なもの、個性的なものなど、実際に触れ、工夫考察する過程で初めて開花する要素がかなり含まれています。

さらに、学習内容に応じて生徒が工具や工作機械を使い、自分の計画に沿って、学習を進める姿が見られます。創造性や柔軟な思考力、実践力を育てる点で見習うべきことが数多くあるような気がします。

ともすると、固定観念にとらわれやすい日常生活を反省し、発想の転換や自分の教師像を見つめ直す契機となりました。教職に身を置き、日々、教育活動に従事し、目の前の子供たちをどう育て伸ばすか考えてきました。生徒が人生の困難にぶつかった時の励ましになる何かを一つでも心に残したい、という気持ちで製作学習や栽培学習の指導に取り組んできました。

国は違っても生徒がいろいろなアイデアを出し合い、試行錯誤しながら一つの物を創り上げて行く過程はすばらしいものがあることを実感することができました。

さらに、国が違い、教育制度や指導方法は異なっていても、同じ使命感や情熱を持ち教育活動を実践している教師がいます。私にとって一生涯忘れえぬ貴重な体験であると同時に、あの感動を胸に、生徒に心の沸き立つような興奮と緊張を与えることができるよう努力していきたいと思っています。

(相馬市立磯部中学校教諭)

 

 

 


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