教育福島0195号(1996年(H08)06月)-031page

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できる作業です。

この作業を通して、仲間と力を合わせることや、根気強く最後までやり通す気持ちを養うことができます。

また、冬場の室内作業として共同での作業態度を養う上で有効です。特に、重複障害のある生徒は、仲間と同じ活動をすることで、意欲的な取り組みができるようになっています。

また、熟練した生徒には、釘打ちや接合などの活動をさせることができます。

 

(2) 粘土づくり

粘土は、鉄分の多い赤粘土を使用するが、瓦や土鉢工場の消えた今日では、粘土採取場がなくなり、遠方から求めています。これらの粘土は、ビニールシートに包み、日光でよく乾かし、水分のなくなったところで土砕きをします。

この方法としては、蛸槌と呼ばれている槌を三人の生徒で持ち上げ、これを落として砕く方法と個々の生徒がそれぞれ木槌などで砕く方法があります。前者は三人の息の合った作業が要求されるのは言うまでもないことです。

次に、この乾燥した粘土をふるいにかけ不純物を取り除くようにします。さらに、土を練る機械で水を混ぜながらよりよい粘土に作り上げて

いくようにします。

本校で使用している土を練る機械は、菓子店で使っていたケーキ作り用であり、負荷が掛かり過ぎないように気をつけています。

こうして練り上がった粘土は、ビニールに包んで、ある程度の期間保存してから使用します。これは、水分を均一に浸透させ、成形後のひび割れを起こさせないためです。

 

(3) 型おこし・成形

型おこしは「馬っこ」の雌型に粘土を詰めて成形する方法です。

この際、型を傷めないようにするとともに、指先の力が凹盤にスムーズに伝わるように布団を使用します。

型おこしは、作業の中で重要なもので、作品の善し悪しを決定するほど難しいものです。

失敗の例としては、詰める粘土の量が多すぎることで、凹の位置がわからなくなることです。したがって、適度の大きさにして生徒には配布するようにしています。

次は、型抜きが少し遅れてしまう場合です。これは、その分だけ石膏に水分が吸収され、硬化してしまうからです。

型抜きは、竹尺で余分な粘土を回りから剥ぎ取り、粘土を粘着して取り出すようにしています。

作業は難しくても、生徒たちは真剣に取り組んでいます。

 

「馬っこ」の型おこし

 

「馬っこ」の型おこし

 

(4) 成形後の形の調整や表面加工

型つめだけでは表現しにくい口、鼻、鈴、鞍等の細工を加えることにより、生き生きとした「馬っこ」の表情に変わります。これらは、生徒が型抜き後のわずかな時間内に進めています。

 

(5)作品の選別

成形の後、作品を陰干しして、乾燥をさせます。このとき、歪んでいるものやヒビが入っているものを取り除く作業を生徒が行います。

そして、仕上がりのよい「馬っこ」作品を合板の上に乗せ接合します。

この場合、わずかな衝撃にも損傷を受けやすいので、生徒も教師もかなり神経を使っています。

 

との粉のふきあげ(ふき取り)

 

との粉のふきあげ(ふき取り)

 

四 まとめ

 

合板に張り付けられた「馬っこ」は、生徒が製作したとは思えないほどのすばらしい民芸品として完成します。そして、この作品は、毎年七月二十三日に行われる相馬野馬追い祭りや地区の祭りなどで一般に販売されます。

このような「馬っこ」づくり等の作業学習を通して、障害のある子供たちが社会参加・自立ができるように、また多様に変化する社会の中でたくましく生きていくことができるよう、指導・援助していきたいと考えています。

 

 

 


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