教育福島0195号(1996年(H08)06月)-035page

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ロスイッチが記憶します。

実際の使用にあたっては、音を即座に出す方法といったんカードを入れた後に本児とコミュニケーションをとり、その後に音を提示する方法の二通りがあります。

この教材・教具は、絵カード部分にのこぎりの歯のような凸凹があるため「のこぎりプレーヤー」と命名しました。

写真2は、作製した教材・教具を活用し授業を行っているところです。

 

写真2 のこぎりプレーヤーの操作を真剣に見つめるA君

 

写真2 のこぎりプレーヤーの操作を真剣に見つめるA君

 

二 機械いじりが大好きなB君のための教材・教具

 

(1) 自作教材・教具の必要性

B君は、中学部の一年生(十二歳)であり、聴力レベルが最重度の男子です。

B君から教師への働きかけは、音声言語、手話、指文字、身振り、文字により行っています。この際、ごく簡単な単語を使用して自分の意思を伝えています。

学校の活動場面で日常的に使用する単語は増えてきていますが、二語文に関する学習場面では主語、述語の関係が理解しにくいため、とまどいがみられます。しかし、興味・関心のある物事に対しては意欲的に取り組み、使用する単語はきちんと覚えようとする姿勢が見られます。

そこで、文字学習や主語、述語の学習においても本児が興味・関心をもち、楽しく取り組める教材・教具があれば、意欲的に学ぼうとする態度が定着し、主体的な学習が促進されるのではないかと考えました。

(2) 教材・教具作製の実際

B君が興味を持って取り組める具体物と絵カードを使用した教材・教具の開発と工夫を行うことにしました。

カードを所定の位置に差し込みスイッチを押すと、正答か誤答かをB君に知らせます。光と音(難聴児に使用)による称賛と教師の称賛が同時に行われ、意欲を持って取り組める自作教材・教具です。

この装置の名称は、カードを使い、絵や文字等のマッチングができることから、「マッチングカード」と命名しました。写真3は、B君の絵カードと文字のマッチング学習を行うために作製した教材・教具です。

 

写真3 B君の教材・教具「マッチングカード」

 

写真3 B君の教材・教具「マッチングカード」

 

三 子供の変容と今後の課題

 

子供の実態及び興味・関心に応じた教材・教具の作製により、学習に意欲的に参加し、指示されたカードを注視する、再生される音を注意深く聞く、教師の言葉による指示を理解しようとする等、学習活動に集中して取り組む姿勢が見られました。さらに、手話、身ぶり、言葉等により、積極的に教師へ働きかけようとする態度が定着しました。

今後は、使用方法を工夫することにより、幅広い活用が期待でき、子供の学習活動及び学習内容を広げられるものと思っています。

本研究を通して、子供の実態に応じたきめ細かな指導・援助のための教材・教具の必要性と重要性を再確認することができました。

平成八年度は、三年間の総まとめとして、より実践的な共同研究を進めております。

 

 

 


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