教育福島0196号(1996年(H08)07月)-050page
ふるさと探訪
県指定重要文化財(絵画)
絹本本色七里ヶ浜図 一面
本図は、江戸時代の寛延元年(一七四八)に岩瀬郡須賀川(現・須賀川市)に生まれ、文政五年(一八二二)に同地で没している亜欧堂田善によって、江戸滞留時代《寛政一〇年(一七九八)-文化一一年(一八一四)》の早い頃に描かれたと思われる作品です。鎌倉七里ヶ浜で煙の立ち上がる焚火を前にして、二人の漁師が江の島越しに遠くの富士山を眺望するところが描かれています。
その構図や賦彩からみて、西洋画の遠近法と陰影法に習っており、おそらく司馬江漢の寛政八年(一七九六)製作の「相州鎌倉七里ヶ浜扉風」(神戸市立博物館蔵)をはじめ「七里ヶ浜図」(大和文華館蔵)などの先行する作品を参考にして製作されたものと考えられます。
田善の肉筆洋風画の作風展開を知る上で貴重な作品であるとして、平成八年三月二二日付けで福島県指定重要文化財に指定されました。
所有者 桑折町
所在地 伊達郡桑折町字陣屋一二番地
(財)桑折町文化会館(種徳美術館)
県指定重要文化財(絵画)
紙本金地著色叢竹花鳥図
六曲屏風 一双
本図は、六曲屏風一双の向かって左隻に生い茂る篠竹と右隻に同じく生い茂る篠竹と白椿の根元で餌を漁る二羽の雑鳩が描かれています。
画面中央を余白として、背景に景物をいっさい描かず、また後景の空間と前景の地面とに境のない画面構成をしています。篠竹や白椿などは墨の輪郭線でくくる伝統的な勾靱体の描法で濃密に描き、雄鳩は翻毛画の描法で細かい毛描きを駆使しています。箔押しの金地と竹葉の緑、椿の花の白との対比が鮮麗で、また篠竹、老梅、白椿やすみれたんぽぽの草花そして雄鳩などの描写は、装飾的でありますが、力強さと生意があり、桃山時代の金碧障壁画の作風を色濃く伝えるものです。
本図は、筆者や伝来を明らでないのは惜しまれますが、筆致には桃山時代以来の狩野派・土佐派・長谷川派のいずれにも共通するところがあり、筆者はそれら画派に精通した善巧の絵師が考えられ、江戸時代前期の花鳥図屏風の中で画題稀な佳作であるとして、平成八年三月二二日付けで福島県指定重要文化財として指定されました。
所有者 桑折町
所在地 伊達郡桑折町字倖屋一二番地
(財)桑折町文化会館(種徳美術館)