教育福島0197号(1996年(H08)09月)-006page

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提言

 

個性を豊かに

−物質の世界に学ぶ研究・教育のあり方−

 

東京都立大学理学部教授

羽生隆昭

 

がすすめられている。問題は入学後もこの偏差値を引きずっていることである。

 

画一化ということばが多く使われている。大学につとめている者にとってこのことばの響きは良くない。画一化即没個性を意味していると思われるからだ。時期的に話題となることは少ないが、入試時期にはいつも繰り返し論ぜられる大学のあり方、入試選抜方法のなかに必ずでてくる輪切り現象、すなわち同じような偏差値の者が一団となって大学に入ること、が画一化の一つとみられている。一方、個人の本質をみようとする入試形態も多く、一芸重視などユニークな方法を実施して画一化の波をくい止めようとする改革がすすめられている。問題は入学後もこの偏差値を引きずっていることである。

ところで、このようなことについて日頃の研究・教育活動を通して感じていることがある。仕事がら対象が物質であり、その見方も物理的になってしまう。物質はどうしてあのように変化に富んでいて複雑で奇妙な性質をもつのであろうか。

身のまわりで手に触れることの多い金属を例にとると、金属のなかには磁石になったり良く電気を通すとか、銅は赤銅色に金は黄金色に輝くというように、物質が変わればその物質の巨視的な性質が異なる。これはなぜなのだろうか。それは物質の中の電子の性格がそれぞれ違うからだ。電子といってもいろいろなものが存在するが、物質を構成している最小単位である原子の一番外側にいる電子の性質

 

 

 


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