教育福島0197号(1996年(H08)09月)-023page
随想
日々の想い
ずいそう
日々の「豊かさ」
澤田三登利
「このコーヒーは、何というコーヒーですか」
「どこにでも売っているインスタントコーヒーですよ」
「とてもおいしく感じます」
最近のわが家での来客との会話です。ごく普通のインスタントコーヒーを出して来客からほめられたことは以前にもありましたので、わたしはコーヒーの入れ方がうまいんだと少しいい気分になっていました。さらに、家族からは、
「うちで飲むお茶は最高だよ。味がまろやかだよ」
などと言われていたので、わたしはお茶の入れ方もうまいんだと、ますますいい気分になっていました。
ところがある日、娘がこんなことを言いました。
「うちの水は、おいしいね」
わたしは、はっとしました。お茶がおいしいのも、コーヒーがおいしいのも、「水」が為せる技なのではないかと思い始めたのです。
わが家の水は地下水を汲み揚げた井戸水です。たしかに、わたしでも学校の水よりわが家の水がおいしいと感じたことはあります。もしかすると「六甲の水」と同じくらいおいしいかもしれません。その「水」のおいしさが、お茶の味を引き立たせ、インスタントコーヒーを特別の逸品にしたのではないかと思うようになったのです。
わたしの住んでいる地域では、井戸を掘っている家は多いのですが、「おいしい水」が家庭から段々少なくなりつつあることも事実です。
わたしの家から車で十分位走ったところに「いっぱい清水」という所があります。その名のとおり、清水が湧き出しているのです。昔、旅人が喉を潤し、疲れをいやして、再び旅立っていったと言われています。幸いなことに、「いっぱい清水」は今日まで、乾くことなく湧き出ています。この「いっぱい清水」を訪れる人が最近増えています。ポリタンクやペットボトルに湧き出る水を汲んでいくのです。
「いっぱい清水」と同じような水を毎日ふんだんに使っているわたしは、とても「豊かな暮らし」をおくっているのかもしれません。「豊かさ」というと物がたくさんあると考えがちですが、自分にとって、当り前になってしまっていることの中にも、「豊かさ」があるのではないでしょうか。何気ない、そして、目立たない「豊かさ」を大切にできる子供を育てていきたいと思う今日このころです。
(いわき市立好間第三小学校教諭)
暑い日の心あたたまる研修
峯岸峯子
このところ子供たちの心の問題に関する記事や報道が目につくばかりでなく、ごく身近なところからも聞かれる。我々大人としてどのように子供たちの心に触れていけばよいのか…。そっと大事に伸ばしたい子供の心と、剪定しておきたい子供の心とがありそうである。
夏休みの暑い日、市の研究協議会で発表された実践事例から…。
○K君のこと
入園時まで都会育ち。母親は育児に専念しているが、K君のすべてを受け入れ過ぎ、我慢するということ