教育福島0198号(1996年(H08)10月)-006page

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提言

アトランタオリンピックに参加して

 

アトランタ五輪代表選手

萩原美樹子

 

衆が光の渦にぼうっと浮かび上がっているかのよすに私の眼下に拡がりました。

 

それは夢にまで見た瞬間でした。係員にせかされて狭い通路を汗だくになって走り抜け、まるで夜空に向かって伸びて行くような階段を登り詰めました。すると、宝石箱をひっくりかえしたような、もはや色彩を識別できない程の群衆が光の渦にぼうっと浮かび上がっているかのよすに私の眼下に拡がりました。

およそ地球上の光景とは思えませんでした。夜になり、漸く涼しくなってきた地球上の異次元空間″アトランタ″の競技場を、私はフワフワと雲上を歩いているかのような足取りで歩き始めました。

去る七月十九日(現地時間)に行われたアトランタオリンピック開会式の入場行進は、私の記憶の中でこんな風に画像化されています。恐らく、私の脳裏からこの光景の心象は一生消えゆくことはないでしょう。

昨今の近代オリンピックの意義や在り方とかはさておき、スポーツに携わる者なら必ず一度は夢見る世界最高峰に君臨するのがオリンピックです。このことは、誰しもが認めるところです。今回、幸運にもそのオリンピックに参加することができた我が日本女子バスケットボールチームにとって、五輪は全く未知な場でした。女子バスケットチームが五輪に参加するのはモントリオール以来、実に二十年振りのことでした。選手は勿論のこと、監督やスタッフにとっても初めてのことでした。

「どんな雰囲気なんだろうか、自分のプレイがしっかりできるのかな…」オリンピックまでの合宿期間中は期待感より

 

 

 


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