教育福島0200号(1997年(H09)01月)-034page
意欲的に「自分らしさ」を表現できる子どもの育成に関する研究
−題材開発と指導・評価の工夫を通して−
南会津郡下郷町立南小学校教諭 前田敬
一 研究主題設定の理由
今の大人の社会において、絵を描いたり、ものをつくったりすることを楽しいと考えている人は意外に少ない。むしろ、苦手だと考える人の方が多いだろう。これは子供も同様で、学年が進むにつれてその傾向が強くなっている。この原因は、ものの形を上手に写したり、正確に作ったりするといった上手な作品づくりを目指す風潮があるためである。
しかし、本来、造形表現活動は、自分自身の考えや方法で、「自分らしさ」を追求したり、発見したりしながら自分自身の世界を表現していくことである。
このことから、子供たちに表現技術の上手下手を気にすることなく、「自分らしさ」を追求・発見・表現できる体験をさせていくことが図画工作科の今日的課題であると考える。
また、「自分らしさ」を表現することは、他の子供の「その子らしさ」に気づくことでもあり、自他のよさを認め合うなど人間関係の改善といったこれからの教育の方向でもあると考える。
そこで、「自分らしさ」を表現できる子供を育成するために、題材開発や指導・評価の在り方を研究していくことがこの研究のねらいである。
二 研究仮設
造形表現活動に興味関心をもち、楽しく表現できるように、題材開発を工夫し、指導や評価の在り方を工夫していけば、意欲的に「自分らしさ」を表現できる子供が育つであろう。
三 研究の内容・方法
(1)地域素材を生かした題材の開発・工夫
自分の思いや願いを明確にもてるように、自然素材のよさを生かした題材を開発したり工夫したりする。
〇子供の興味や関心・意欲を喚起する題材の開発と工夫
(2)教材提示の工夫
多様な発想をふくらませたり、個々の表現の幅を広げたりするために題材との出合わせ方を工夫する。
〇教師による未完成の試作品や資料の提示
(3)学習カードの活用
活動への意欲を明確にもたせ、持続させるために、学習カードを活用する。
〇学習カードによる活動内容の確認、自己のめあてと反省
〇アイデアスケッチによる構想
(4)個に応じた支援の工夫
子供の主体的活動を支援するために、個に応じた指導の在り方を工夫する。
〇個人カルテによる子供の実態
把握と具体的支援の明確化
(5)評価の工夫
指導と評価の一体化を図るとともに、自他のよさを認め合えるように評価の在り方を工夫する。
〇個人カルテによる題材をとおした個のよさの評価
〇学習カードによる自己評価と教師による評価
〇鑑賞の場における自己評価、相互評価、教師による評価
四 授業の実践
(1)「あれ?木が生き物に見えてきた」(立体に表す)
1)題材の目標
おもしろい形や色、木肌の倒木や流木を見つけ、その本を切ったり、つないだり、組み合わせたり、彫ったり、描いたりして木の生き物をつくることができる。
2)活動の流れと指導のポイント
ア 流木と出合う
おもしろい形の流木を提示し、何に見えるか話し合う。流木の形や節などに着目し、流木が別な物に見えてくるおもしろさに気づく。
イ 流木を集め、造形遊びをする
まず、近くの川原に出かけて流木を集める。発想の幅を広げるた