教育福島0204号(1997年(H09)07月)-006page

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提言

 

ことわざ考

 

福島県市町村教育委員会連絡協議会長

 

福島県市町村教育委員会連絡協議会長

加賀美代子

 

ある時、学生にレポートの提出は「六日の菖蒲(あやめ)」にならないようにと注意を促したら、けげんそうな顔をした。通じなかったらしい。時々、就職試験対策で故事ことわざなどを懸命に暗記している姿を見るが、それは若者の生活から活きたことわざが消えつつあるのだなと感じさせられるひとこまである。

ことわざには口調のよい短い表現の中に、機知に富み、含蓄のある内容を盛り込んだものが多くある。その端的な表現が世の中の人々の共感を得て、人々の会話の中に幅広く取り入れられているのであろう。さらにつけ加えるなら、ことわざは十分に表現された思想を一行の文に凝縮したものである。自分の言いたいことを簡潔に、しかも皆が知っている形で表現できる点、使用する場所によっては威力を発揮するものである。それ故に、長い歴史の中で人間が作り出した文化であり、生活の知恵として、また人生の教訓となって定着してきたのである。

ところが最近、わたしたちの生活環境の変化によって、ことばがひとり歩きを始めるために、本来の意味と違ったことわざの用い方が行われることがある。とくに、現代のテレビなどのマス・メディアの発達には、ジョークをねらうあまり、わざと誤用して人目を引こうとする企画が現われる。つい最近までテレビドラマ「渡る世間は鬼ばかり」が放映されていたが、その時「渡る世間に鬼はない」を連想するとしたら、鬼はないは鬼ばかりはいないということ

 

 

 


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