教育福島0204号(1997年(H09)07月)-007page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 

であるが、さてこのドラマはジョークとして通用したであろうか。

「三つ子の魂百まで」は、人生の節目の中で三歳頃の子育ての仕方が、その性格を形造っていく過程で最も重要な一つの時期であることを物語っているのであるが、早期教育の必要性を鵜呑みにしている若い親は、子供の性格は三歳までに決まってしまうと、真顔で話してくる。子育ては「せいては事をし損ずる」、されど「せかねば事が間に合わぬ」妙なる仕事と説くことにしている。

ことわざの誤用は現代の社会背景を映し出しているように思える。都市化が進む中での核家族の生活は人間関係が疎遠になりやすい。また、科学の進歩は機能的で都合のよい快適な社会を実現してくれたが、反面、スイッチのワンタッチで操作する生活は人間疎外の環境を生み出し、「隣は何をする人ぞ」と我関せずの相互関係をつくっている。大人社会はなるべく面倒な人間関係を避ける方向に進んでいるのであるから、大人たちは人間関係の機微に触れるようなことわざを口にしなくなったのも当然のことで、その影響を若者たちがもろに受けていると思われる。

今後は大人の世界に活きたことわざの復活を願い、豊富なことわざを駆使して語り、適確な引用によって会話を盛りあげたいものである。共通の教養を基盤として共々に「隗(かい)より始め」たいものと考えたい。

 

【著者紹介】

加賀美代子・かがみよこ

〔略歴〕

宮城県仙台市出身 東北大学文学部心理学科卒

昭和三十三年 四月〜平成 元年 三月

福島県職員

・児童相談所、婦人相談所、身障者更生相談所の心理判定員

・県中央児童相談所相談判定課長

・県生活福祉部 青少年婦人課主幹

・県消費生活センター所長

・県生活福祉部 児童家庭課長

平成 元年 四月より 福島女子短期大学 専任講師

二年 七月〜八年 六月 県精神医療審査会委員

二年 十月より 福島家庭裁判所家事調停委員

三年十二月より 福島市教育委員会委員

八年 三月より 福島市教育委員会委員長

八年 四月より 福島女子短期大学 非常勤講師

八年 五月より 福島県市町村教育委員会連絡協議会長

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。