教育福島0204号(1997年(H09)07月)-014page
2) 地域性、学校規模、伝統や校風に着目し、学校の独自性を尊重した道徳教育となるよう配慮すること。
3) 児童生徒同士や教師と児童生徒の豊かな人間関係を醸成して、よさの尊重や認め合いが日常的に行えるよう配慮すること。
4) いじめ問題への対応として、人間としての在り方や生き方に関わる内容を重点的に取り上げ、指導の充実に努めるよう配慮すること。
5) 教師は、児童生徒の道徳性の変容の傾向をとらえ、よりよく生きようとする児童生徒の努力を評価し、その人間的成長を見守ること。
6) 道徳教育における家庭や地域社会との連携を図り、一貫した道徳的実践の指導ができるようにすること。
(2) 豊かな体験による指導
道徳教育における豊かな体験とは豊かな心の育成にかかわる体験であり、道徳的価値を内面的に自覚したり、行為として表すことのできる体験である。
児童生徒は、学校生活の様々な体験を通してたくさんの道徳的問題や課題に直面する。それらに豊かに反応して主体的に解決しようと考えたり判断しようとしたりする内面的な心の働きが、道徳性を育むことになる。
〈指導上の留意点〉
1) 学校教育の中で計画される豊かな体験は、それぞれ独自のねらいを持っている。教師はその体験について、道徳の内容の四つの視点(自分自身、他の人とのかかわり、自然や崇高なものとのかかわり、集団や社会とのかかわり)から捉え直し、どのような支援が可能か十分に検討しておくこと。
2) 道徳の時間のもつ補充、深化、統合の機能を生かし、豊かな体験の中の道徳的問題や課題と関連を図った指導を心がけること。
3) 担任は、児童生徒が学級で年間を通してどのような体験をするのかを構造的に把握し、道徳的実践の場と機会に偏りがないように配慮すること。
(3) 内面に根ざした道徳性の育成
この指導の中核となるのが、道徳の時間の指導である。道徳の時間は全教育活動において行われる道徳教育を、道徳の内容との関連で全般にわたって見直し、それらの中で指導されたことをさらに補充、深化、統合して調和的な道徳性の育成を図る時間である。道徳の時間を通し、児童生徒の道徳的心情を豊かにし、道徳的判断力を高め、道徳的態度と実践意欲の向上を図るなど、道徳的実践力の育成を目指している。
〈指導上の留意点〉
1) 導入で「ねらい」への興味・関心を高め、描かれている道徳的問題や課題に心を動かし、学習する道徳的内容に対する課題意識を喚起すること。
2) 展開部分においては、資料への的確で深い共感を引き出すこと。
そのためには、資料の提示等に十分な工夫を凝らすこと。
3) 価値を内面的に自覚させる段階では、多様な価値意識を引き出して自分と比べてみる学習を通して価値を内面的に感得させること。
4) 終末の段階では、一時間の学習によって高められた価値意識を持続するように配慮すること。
(4) 環境による指導
「人は環境をつくり、環境が人をつくる」とも言われる。心の教育である道徳教育にとって、望ましい環境を積極的につくることは、心に好ましい刺激を与えたり、道徳教育の日常化を図ったりする上で大切な役割をもっている。そのためには、学級や学校における人間関係を充実するとともに、校舎・教室等の環境整備に努めることが必要である。
〈指導上の留意点〉
1) 日常における教師の言葉かけなど日常生活の何気ない小さな教育活動の積み重ねが人的環境の基本であるととらえること。
2) 教師との信頼関係や学級の支持的風土作りなど豊かな人間関係を醸成すること。
3) 道徳に関する情報コーナーを設けるなど、心に好ましい刺激を与えるような工夫をして、児童生徒に実践意欲を喚起するとともに、その持続が図られるようにすること。
五 特別活動の充実
これからの教育においては、児童生徒一人一人が生涯にわたって自己実現を目指し、心豊かに、主体的、創造的に生きていくことができる資質や能力を育成することが求められている。
そのために新しい学力観に立つ特別活動の指導は、児童生徒一人一人がもてるよさや可能性を生かし伸ばすことを指導の根底に据えて、児童生徒を中心とした主体的な活動を基本にして展開する必要がある。
したがって、これからの特別活動においては、特別活動の特質を生かし、児童生徒が意欲をもって取り組み、自ら考え主体的に判断し、行動できる資質や能力の育成を目指して学習指導を創意工夫し、特別活動の各内容の特質に応じた授業の改善に